創刊67年、米風刺雑誌が廃刊に

風刺雑誌『MAD』が今秋、67年の歴史に事実上幕を下ろす。(Photo by Broadimage/Shutterstock)

長きにわたり出版されてきた米風刺雑誌『MAD Magazine』が、今年の秋をもって67年の歴史にいったん幕を下ろすことになった。

2019年10月に出版される第11号(MAD誌は事務所移転後、2018年から刊行番号をリセットしている)がMAD誌の「最新刊」となるが、表紙が新しくなることを除き、コンテンツはすべて過去のバックナンバーからの抜粋記事で構成される。

MAD誌オリジナルの新コンテンツは年末に出版される特集号で登場する予定。CNNの報道によれば、親会社DC Entertainmentは出版元として引き続き過去のコンテンツを使ったMAD誌やその他特別号を出版していく。

MAD誌は1952年、ハーヴェイ・カーツマン氏とウィリアム・ゲインズ氏がコミックブック風の雑誌として創刊。以来、ポップカルチャーや政治の風刺やパロディの発信源として一目置かれていた。現代アメリカのコメディの根幹でもあり、雑誌のマスコットでたびたび表紙にも登場するアルフレッド・E・ニューマンや、人気を博した裏表紙の折り込み漫画『Spy vs. Spy』など、数々の人気コンテンツから時代のブームが生まれた。

MAD誌廃刊の知らせが発表されたのは現地時間7月3日。雑誌のTwitterアカウントも、特に何の告知もなく、6月27日以降しばらく停止状態だった。2015年、MAD誌史上初の特別編集長をつとめたアル・ヤンコビックをはじめ、ソーシャルメディアでは廃刊を惜しむ声があがった。

「67年続いたMAD誌が廃刊になると聞いて、本当に残念だ。子供のころにどれだけ多くの影響を受けたか、語り出したら止まらないよ――あの雑誌のおかげで、僕はこんな変人になったんだから。さらば、アメリカが生んだ史上最高の雑誌よ」(アル・ヤンコビック)

映画監督のクリス・ミラーは、1994年にMAD誌でインターンとして働いていた時のことを振り返った。「編集部にはドラムセットが置いてあって、ジョークが滑ったときはリムショットを叩くのが決まりだった。いい思い出がいっぱいだ。寂しくなるよ」。元編集者のアリー・ゴアールツ氏もこう述べた。「MAD誌で働くことができて、子どものころの夢がかないました。MAD誌は色鮮やかな歴史を持つ雑誌です。私が(おそらく皆さんも)敬愛するコメディアンやコメディ作家をすべて網羅していました」

スティーヴン・ヴァン・ザントまでもが雑誌に敬意を表し、『ザ・ソプラノズ』をパロった過去の表紙を投稿した。「MAD誌よ、安らかに眠れ。本当に哀しい日だ。今こそこの雑誌が必要な時代なのに!……世界は前よりもつまらなくなってしまった」

Translated by Akiko Kato

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