どん底の10年を味わったシュガー・レイ、「90年代ノスタルジー」の需要と供給を語る

シュガー・レイのマーク・マッグラス(左)、ロドニー・シェパード(Photo by Kevin Estrada)

1年半前、有名人リアリティ番組『Celebrity Big Brother』のプロデューサー陣はシュガー・レイのフロントマンであるマーク・マッグラスに対し、撮影の前にレコーディング・セッションを行い、番組用のプロモーション映像を作りたいと申し出た。

シュガー・レイのギタリストであるロドニー・シェパードはスタジオに到着した時、トライしてみたい楽曲のアイデアが頭の中にあったと振り返る。「そのアイデアを元に作り始めて、“Highest Tree”という曲を完成させたんだ」と、マッグラスは語る。「プロモーション映像を撮るためのセッションが、意味のあるセッションになったんだよ」



『Celebrity Big Brother』でマッグラスは番組内の投票で3位入賞を果たしたが、その翌日、シェパードからマッグラスに電話がかかってきた。「シェパードは俺に、『おい、あの曲でBMGと契約することになったぞ』と言ってきたんだ。『彼らはあの曲が好きらしい』とね。俺は信じられなかったよ」

彼が驚くのも無理はない。シュガー・レイは1990年代後半に数百万枚のCDセールスを記録し、2000年代前半に「フライ」や「エヴリ・モーニング」、「サムデイ」、「ホエン・イッツ・オーヴァー」といった楽曲で多数のラジオヒットを飛ばしたが、2003年にリリースした『レジャーでGO!』があまりヒットしなかったことから運勢が急降下し、ついには所属レーベルであったアトランティック・レコードの契約を切られてしまう。2009年にインディーレーベルであるPulse Musicからリリースされた彼らの最新アルバム『Music For Cougars〜復活の常夏番長〜』も振わず、チャートで80位より上に行くことはなかった。

その後10年、彼らは生き残るために必死だった。ドラマーのスタン・フラッツァーとベーシストのマーフィー・カージスはその渦中でバンドを離れ、のちに裁判で争うことになった。「俺たちは23年間も一緒にいたんだ。ただ、バンド結成以来、一番売れなかった時間を過ごしたわけだし、2人の脱退は大きな謎でも何でもないよ」と、マッグラスは言う。

マッグラスはシュガー・レイが7月26日にリリースする新作『Little Yachty』の反応が良いことを願っているが、このチャンスに対する見解は現実的だ。「俺たちは 新しいアルバムに関して、最小限の期待と、高い志を持っているんだ」と語るマッグラスは、「メジャーレーベルと契約してアルバムを作って、それが世界中に知れ渡る。もし誰かが作品を聴きたいと思ったら、はい、どうぞ、って感じだね。俺の目標はそれで達成される。本当に」と、冷静な分析をする。

バンドが自身の新作を『Little Yachty』と名付けたのには、こんな意味がある。それは彼らが、シュガー・レイとは90年代におけるヨット・ロック・
バンドであると感じているからだ。アルバムのほとんどは、パニック!アット・ザ・ディスコの「ハイ・ホープス」などを手がけたプロデューサー、サム・ホランダーと共に制作を進めた。「 今をときめく、情熱に耳を向けてくれるソングライターと一緒に制作をするのは、すごく楽しかったよ」と、マッグラスは振り返る。「アルバムは、シュガー・レイ流のモダンなサウンドになってい」

Translated by Leyna Shibuya

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