サザンオールスターズ東京ドーム公演、国民的バンドが今の時代に問う「異形の表現」

6月16日に東京ドームでツアーファイナル公演を開催したサザンオールスターズ(Photo by 西槇太一)

サザンオールスターズの全国ツアー「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」が大盛況のうちに幕を閉じた。今回は6月16日に東京ドームで開催されたファイナル公演の模様を、音楽評論家の高橋健太郎がレポート。3時間超のあいだに全36曲が披露された「濃密な展開」を振り返る。

小さな子供から70代までは楽にいる。孫連れとか、三代の家族連れだっているだろう。中心はどのあたりの世代?と周りを見回しても今ひとつ解らない。そんな観客達が東京ドームを埋め尽くしていた。なるほど、これが国民的ロック・バンドか。その呼称が腑に落ちた。

三階席から見守る僕はといえば、サザンのメンバー達とは同世代で、桑田佳祐とは同い年だ。今回は40周年を掲げたツアーだが、僕が初めて彼らを見たのは1977年の春だから42年前。サザンオールスターズという名前になり、オリジナル曲が数曲できたくらいの頃だ。以後、2nd発表の頃までの都内のライヴはほとんど見ている初期サポーターだが、還暦を過ぎた今、同じバンドを東京ドームで見ているというのは、どこか現実感が乏しかったりもする。

ステージ上のメンバーは、自分の席からは肉眼では豆粒くらいにしか見えないから、ひたすら複数のスクリーンを目で追うことになる。ドーム級のコンサートも幾つか体験してきたが、これほどまでに情報量の多い映像を伴ったものは初めてだ。ステージ上はホーンやコーラスを含むビッグ・バンド編成で、ダンサーも絡めて、ショーアップされたステージが進む。カメラ・クルーがそれをリアルタイムで映像化して、様々なエフェクトを凝らしながら、スクリーンにぶちまけていく。ただし、歌詞だけは常にきちんと読ませる。3時間半に及ぶコンサートでも一瞬たりとも飽きなかったのは、そのあたりのスクリーンでも楽しめるコンサートとしての構成・演出に負うところも大きいだろう。


Photo by 西槇太一

視覚的にはそんな、2019年だからこそのコンサートだが、聴こえてくるサウンドには特別なギミックはない。極めてオーセンティックなバンドの生演奏だ。ああ、初めて観た時から何も変わってない。そう思わずにいられない5人のメンバーの佇まい。学生時代からのダチとやり続けてきたからこその、このバンド感。だが、そんな思い出に浸って、ほろりとばかりはしていられないマッドネスが待ち受けているのが、この夜のコンサートだった。

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