バンド結成57年目、ローリング・ストーンズのマサチューセッツ公演ライブレポート

こういう一時的な中断があったのは、メンバーがBステージに移動する時間を作るために、ジャガーが制作陣に会場の音楽を流すように頼んだときや、バンドのメンバー紹介の最中にジャガーが間違ってキーボーディストのチャック・リーベルをベーシストと紹介したときだ。ジャガーは「やっちまったぜ」と言いながら大笑いしていた。彼らはこういう小さなミスを柳に風と受け流す。そんな彼らを見ていると、キースがステージでよく言う「ここにいられて嬉しいよ、どこにいても嬉しいよ」という言葉が脳裏に浮かんだ。

ここであげた以外にも素晴らしい瞬間が何度もあった。リチャーズがソウルフルに歌い上げた「スリッピング・アウェイ」。彼は、セットリストからこの曲が外れていたときは弾きたくて仕方なかったと言った。「黒くぬれ!」で、ワッツがドラムを叩くたびにドラム音がスタジアム中にこだまし、リチャーズが感情を抑えた表情で真剣にリフをプレイし、かつてないほど不穏な雰囲気を醸していた。そして、いつも通り、ロニー・ウッドの姿に感動を覚えた。彼はこの曲のシタールのメロディーをギターで再現し、そのあとは「ミス・ユー」の獰猛なソロの最中にスタッカートするプレイを連弾し、ジャガーを吹き飛ばしそうな勢いだった。

この夜の最後の曲は10分近く演奏した「サティスファクション」だ。現在のストーンズにとってこの曲は退屈な曲になる危険性を秘めているのだが、この夜はこの曲がコンサートのハイライトとなった。リチャーズとウッドはリフをインプロヴァイズし、ジャガーはキャットウォークを全速力で走り、ジャケットを脱ぎ捨て、この曲のR&Bの幻想にどっぷりと浸かっていた。バックコーラスが「Give me some satisfaction」と歌うと、ジャガーは「I’ve got to get it!」と大声で応え、「Got to, got to, got to!」と続けながらその声をどんどん大きくしていった。このツアーでも、バンドは相変わらず満足を探し求めている。彼らが満足を追い求めている限り、世界は素晴らしい場所であり続けるのだ。



Translated by Miki Nakayama

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