菅田将暉が盟友・仲野太賀と作り上げた、日記のような愛おしき世界

菅田:ここにプロットのなぐり書きがあり。今日dutch(山田)が持ってきてくれて、久々に見たんですけどね、これ、みなさんすごいですよ? 俺は本当にね、5分のつもりで書いてたんです、ペラ2枚だけ。なのにこれがあんな風(ショートフィルム『クローバー』)になるんですから。映像作家ってすごいですよ。

山田:(笑)でも最初の時点でもう“冒頭は長回しで”とかは見えていて。ほぼその通りに撮ったはずだったんですけどね。50分になってしまいました。映像監督としての菅田くんは、判断早いよね。“次行こう”とか“OK”とか。でも現場で見てて気づいたけど、迷ってる時はこうやって(考え込んでいるような仕草で)顎に手当ててる(笑)

菅田:あっはっは!

山田:癖ですよね(笑)。

菅田:今回ね、太賀が出てくれたでしょう。役者として僕一番好きな同世代で。作品見るたびにこいつすごいなあって思うんですけど。でもそんな太賀から、セリフを奪い、動きを奪うと、映画館はこういう雰囲気になるんだなあって思いました。それが役者としては楽しくて。何かに集中している人の横顔が僕、好きなんでしょうね。だからあいつの日々のいいところが撮れたんじゃないかなって勝手に思ってます。普段ひとりで生活しているとそんなにしゃべらないですよね? だからたまにはそういうあいつもいいかなって。今こそ、何もしない太賀を見たいって思ったんですよね。『今日から俺は!!』でワーーーってやってる太賀ももちろんかっこいいけど。このなんにもしていない感じ。でも本当、今日みんなよく観てくれたなって思わない?。


Photo by 上飯坂一

山田:いやあ……まちがいない。(映像中に)何回着替えるんだ、って(笑)。

菅田:20代中盤の、もう“小おじさん”がさ、スーツから着替えてるだけの3分間、とかあるじゃない? “何見せられてるんだろう……? もう俺だったらちょっと文句言うよ!”って(笑)。でも“ああいう日々じゃん!?”ってことがやりたかっただけなんです。

石崎:そういえば僕は“台本を見ないで”って菅田くんに言われてたんだよね。

菅田:長回しのシーンとかはポイントポイントで、“どこかでこれやってね”っていう爆弾を出演者に渡しておいて、いつ放り投げるかは自由っていう感じでみんなにお願いしておいたんだよね。あいみょんとか言ってるのは、あんなのもうあいつ(仲野太賀)のアドリブですよ(笑)。

山田:“灰色と青”とかもアドリブだよね。

石崎:でもすごかったのは、あれ撮影の前日からみんなで集まってたんだよね。

菅田:撮影が2日間で、2日目があの部屋のシーンだったんだよね。だから本当にみんなで遊んで、あの部屋を散らかしたんだった。

石崎:それで入って行ったからこそ、4人の長回しのシーンもすんなり入っていけた(笑)。

菅田:太賀はあの部屋で寝たもんだから本当にちょっと風邪ひきかけて(笑)。僕も劇中で声ちょっと枯れてるってことになってますけど、あれはレコーディングとかが重なっている時期で、本当に声が出なくなっちゃってて。だから演出については紙に文字書いてカンペでやってたんですよね。でもなんで俺あの時、ひゅーいくんに“台本見ないで”って言ったんだろう……?

石崎:なんでだろうね。でも監督にそう言われたから頑なに見なかったんだよ(笑)。でもいっこだけ教えてもらったセリフが「おいっすー」だった(笑)。

菅田:全然覚えてないけど(笑)! あ、劇中で太賀が来たら言ってってことか。

山田:あの“おいっすー”の間がヤバいんですよ。できたらみなさん是非もう一回観ていただきたいです。ひゅーいくんが服に隠れてて、ふっと出てくるところね。楽曲「クローバー」が劇中で流れるまでに時間ありますけど、でもあの劇中歌っぽい楽曲の扱いはすごくしゃれてていいですよね。

菅田:あれも現場で決めたんだよね。冒頭20分くらい長回しがあって、その段取りはなんとなく決めてるけどどうなるかわからないし、ひゅーいくんがどこで曲をかけるかもわからないから流れだった。でもちょうど、俺らが部屋から外に出ていったら“落ちサビ”が流れて。タイミングもいろいろ完璧でした。

石崎:僕としても『クローバー』が今回こういう形になって、感無量です。歌詞にもあるように“誰かの愛に変わる日まで”という、本当にそういう歌だし、これからもそういう風になっていくだろうなって感じが、おかげさまでしています。そういう風にこの歌を育ててもらってありがたいなって気持ちでいっぱいです。

菅田:今日はこんな、すごくレアな、今後あるかどうかもわからないスペシャルな日にきてくださり本当にありがとうございました。ひとつ大事な思い出ができましたし、それを観てもらえてすごく嬉しいです。そして、ひゅーいくんの作ってくれた言葉のとおり、こういう僕らの、今日だけではなく、いろんな日々の活動が誰かの愛に変わりますように、という思いで作りました。そうなってくれたら嬉しいです。本当に今日はありがとうございました。

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