極悪非道なレイプ犯に「将来の可能性」はあるのか? 判事の裁定めぐる不条理

判事の裁定に批判が殺到、罷免を求める署名活動も

ニュージャージー州の法律では、重罪の場合は15歳から成人として起訴されるが、トロイアーノ判事はこれを却下。2時間近くも裁定を読み上げ、少年の起訴に対し法律を最大限に適用しないという自らの判断の理由として、彼の学校での成績や恵まれた経歴を挙げた。「彼には明らかに大学進学、それも一流の大学に進学する可能性があります」と言って、トロイアーノ判事はさらに、検察側は少年への起訴・不起訴を検討する際、レイプ被害者に――判事の言葉を借りれば、「本件では、被害者とみられる女性、と呼びましょう」――彼の将来の可能性を考慮すべきだと勧告するよう、判事に申し立てをするべきだったと付け加えた。

トロイアーノ判事の裁定は問題をはらんでいたため、しまいには控訴裁判所は14ページにわたる抗議状で被告人に温情をかけたとして判事を非難した。ニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、現在Change.orgというサイトでは判事の罷免を求める署名活動が行われており、裁定に関するマスコミ報道がきっかけで判事や家族宛てに脅迫状が送られているそうだ。だが、性的暴行事件で判事が被害者の福利よりも、被告の福利を優先させた例は今回に限らない。

元スタンフォード大学の水泳選手、ブロック・ターナーの事件でも似たような議論が持ち上がった。彼は意識不明の女性をゴミ捨て場でレイプしたが、下された判決は懲役6カ月だった。判決を言い渡したアーロン・パースキー判事は、ターナーが「他の人々には脅威とはならない」という事実と、「服役が本人に深刻な影響を及ぼすのではないか」という懸念を理由に、自らの減軽判断を正当化した(パースキー判事はのちに、激怒したカリフォルニア州の有権者から罷免された)。

同じように昨年、複数の女子学生に対する性的暴行、ストーカー行為の罪に問われていたアレック・クックに対し、スティーヴン・エルキー判事は過去に犯罪歴がないのを理由に、わずか3年の禁固刑を言い渡した。エルキー判事は法廷で被害者の一人にこう語りかけた。「どうか、思いやりを持ち続けてください――申し訳ありません――どうか前向きに」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE