「民主主義を救済して欲しい」いま米国民が本気で恐れているのは自国の大統領

ホワイトハウス南側芝生で大統領専用ヘリコプター、マリーンワンに搭乗する前にメディア対応をするトランプ大統領(Pablo Martinez Monsivais/AP/Shutterstock)

アメリカ合衆国の国民の大半が、今一番恐れているのは「大統領」だと言う。メリーランド州のイライジャ・カミングス下院議員は、「『恐れている』と、彼らは言う。私はこれまで一度も……公職に就いて37年間、有権者が自国のリーダーを怖がるなど一度も聞いたことがない」と、語った。

現地時間7月20日に放送されたCNNの番組「S.E. Cupp Unfiltered」で、ミシガン州の下院議員デビー・ディンゲルが、第3世代のアメリカ人の子どもに直接聞いた話として、子どもたちは自分の家族と一緒に真夜中に突然連れ去られる恐怖を感じていると、同番組ホストに語った。「私の足を掴んだ子どもが言ったのです。『ディンゲルさん、ディンゲルさん、真夜中に誰かが家に来て、家族全員を連れ出して、そのあとは誰も自分たちに二度と会えないと思うと怖いです』と」

その後、学区の責任者と話したところ、この子どもの発言は珍しいことではないと教えられたと、ディンゲルが続けた。つまり、現在のアメリカの子どもが怖がっていることがこれなのだ。この学区の責任は「デビー、これが子どもたちの間で話題にあがっている状況を理解してほしい」と頼んだという。

この子どもたちの恐怖が事実無根だとはいい難い。無登録の移民を何千人も拘束したことに加えて、アメリカ合衆国移民関税執行局(ICE)はアメリカ市民の身柄も拘束している。これが大きな懸念材料となり、常にパスポートを携帯するアメリカ人も出てきた。事実、あるアメリカ生まれの海軍退役軍人は、パスポートを持参していたにもかかわらずICEに逮捕されている。

翌日7月21日にはABCの番組「This Week」で、メリーランド州のイライジャ・カミングス下院議員が、彼を支持する有権者の多くがトランプを「恐れている」と言うと述べた。番組ホストのジョージ・ステファノプロスが、大統領が発した複数の人種差別的なコメントを聞いたあと、アメリカ政治の今後の成り行きに不安を感じるかと、カミングス議員にきくと、カミングスは多くのアメリカ国民はトランプの発言を支持していないと答えた。

「行く先々で、私を支持する有権者から繰り返し聞くことが、民主主義を救済してくれ、この国を救ってくれ、だ」とカミングス。

そして「ジョージ、彼らが言うもう一つのことがなにか知っているかい? 彼らは『恐れている』と言うんだよ。私はこれまで一度も……公職に就いて37年になるが、有権者が自国のリーダーを怖いと言うのは一度も聞いたことがない」と続けた。

「リーダーが怖いと? アメリカ合衆国大統領が怖いと?」と、ステファノポロスがたずねた。

するとカミングスは「ああ、まさしくその通り、恐怖の対象はアメリカ合衆国大統領だ」と答えた。

これに続いてステファノポロスが、カミングス自身はトランプを人種差別者だと思うかときいた。これに対してカミングスははっきりと「そう思う。ああ、間違いないね。以前は疑わしいとは思っても、トランプを好意的に理解しようと務めたが、ジョージ、正直な話、あの若い女性たちに向かって発した彼の発言を思い起こしたとき、そんな気持ちは消えた。彼女たちは政府をもっと良くしようとして、未来の世代が本物の民主主義を経験する機会を確保しようとしているだけなんだ。私自身も、瓶を投げつけられて額から血を流したときのことを今でも覚えている。彼らはれっきとした大人で、私に「祖国へ帰れ、ニガー」と叫びながら瓶を投げつけた」と語った。

現在のアメリカ国民は、過去の最も暗い時代を蘇らせて追体験する方向へと進んでいる。そして、それを恐れているのはアメリカ国民だけではない。アメリカのシンクタンク、ピュー研究所の2019年の調査結果で、世界中でアメリカを重大な脅威と見なす人が増えていることが明らかになっている。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE