誰もが弾きたくなった「ジョニー・B・グッド」、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』名シーンを回想

1985年の大ヒット作品『バック・トゥー・ザ・フューチャー』でチャック・ベリーのヒット曲を奏でたマイケル・J・フォックス

1985年の大ヒット作品『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。当時映画を観た誰もが、マイケル・J・フォックスのように「ジョニー・B・グッド」を弾きたくなったであろう歴史に残るあの名場面を振り返る。

それは1955年11月だった。絶望的なまでに生真面目な生徒ばかりが集まった体育館では、ダンスパーティー「エンチャントメント・アンダー・ザ・シー」で生徒たちが陽気にジルバを踊っている。そのステージに登場するのが、チェリーレッド色のギブソンを抱えたマーティ・マクフライという正体不明の転校生。「これはオールディーで」と言ってマーティはとっさに訂正する。「えーっと、これは僕の出身地ではオールディーなんだ」と。その直後、彼は後ろのメンバーを熱烈な「ジョニー・B・グッド」へと導く。これをカバーというのはいささか正確さに欠くだろう。この曲が実際に誕生するのはこの数年後なのだから。会場の高校生たちはわけも分からずに、頭が動き出し、足が動き出し、腰が揺れる。それを見ていた一人の男はこの演奏に心を奪われて、いとこのチャック・ベリーに電話をかけて、彼が探している「新しいサウンドが」これだと、受話器越しに聞かせるのだ。タイムトラベルという奇跡のせいで、マクフライはヒルバレー高校にロックンロールを紹介してしまったのである。

今見ると文化的な問題をはらんだシーンではあるが、これは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のハイライトシーンだ。この作品は1985年7月に公開された大ヒット映画で、主役のマクフライ役を、当時シットコム『ファミリー・タイズ』で大人気のマイケル・J・フォックスが演じた。マクフライは、デロリアンに乗ってタイムトラベルに出かけ、自分の母親からの口説きをかわしながら、まだ10代の両親をくっつけるというミッションを行う。フォックスの演奏はかなり説得力があるが、実はティム・メイのギターワークを真似て演じながら、歌手マーク・キャンベルの歌声に合わせて口パクしている。意外なことに、脚本・監督のロバート・ゼメキスは、公開中止を恐れてこのシーンを削除しようとした。しかし、徐々に未来を先取りしすぎたヴァン・ヘイレン的な速弾きになり、ピート・タウンゼントばりにアンプを蹴り倒したマクフライに驚かされた高校生たちよりも、試写会の観客が色よい反応をしたおかげで生きながらえたのである。困惑した高校生たちにマクフライは「まだこれは無理みたいだね」と印象的なセリフを言ったあと、「でも、あんたらの子供は気にいるよ」と続ける。

実際問題、1955年にアイク・ターナーとビリー・ヘイリーがすでにロック風の音楽を実験し始めていた事実など、誰が気にするというのだろう。チャック・ベリーでさえも「Maybellene(原題)」という草分け的な楽曲を同年夏にリリースしていた。映画のワンシーンとして、あえて言わせてもらうと、ここには間抜けさとカッコよさが共存する。このシーンを見たベリーがどう思ったのかは定かではないが、ベリーの60歳の誕生会で、彼のバックバンドが映画に登場するマクフライのバンド、スターライターズと同じスーツを着て演奏したことは記しておこう。

Translated by Miki Nakayama

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