Spotifyが撤回した5つのコンテンツ戦略

Barclays Centerで開催された製品発表イベントで、Samsungとのパートナーシップについて語るSpotifyの最高経営責任者ダニエル・エク。2018年8月9日、ブルックリンにて。(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

IT企業が新しいアイデアの可否をユーザーに問うケースは珍しくないが、Spotifyはそのパターンを頻繁に繰り返している。

「Spotifyをスタートさせた当初、23歳で独身だった私はストックホルムのダウンタウンにあるバーで、毎晩のようにシャンパンを仲間たちに浴びせていました。私は以前、養護施設に預けた子供を迎えに行くような人々のことを見下し、若くして成功を放棄した負け犬だと考えていました。今でこそ言える本音です」

ダニエル・エクという人間は変わった。2016年にヘルシンキで開催されたSlush Conferenceの場で語ったように、Spotifyをスタートさせてからの10年間で彼の人生は劇的に変化し、33歳になった彼はこう語った。「現在の私は、そういった生活に片足を突っ込んでいます。2人の子供がいて、家に買ったら『HOMELAND/ホームランド』を観て、メールをチェックし、ベッドに入るというサイクルを繰り返しています。以前の自分とはすっかり別人です」

時が経つにつれて人の性格は変わっていくに違いないが、エクのケースに限って言えば、彼が心血を注いで築き上げた世界最大のストリーミングサービス、Spotifyの成長と無関係ではないだろう。音楽ビジネスに革命を起こしたSpotifyは、ニューヨーク証券取引所で280億ドルの時価総額が付けられているにもかかわらず、現在でも利益を出すには至っていない。過去4年間(2015年ー2018年)の年間純損失の合計は、実に20億ドルを上回る。

Spotifyが利益を出せるようになるには、補助的収入を増幅させる何かが必要だということをエクは理解しており、現時点ではポッドキャストがそれに当たる。同分野に参入するにあたってSpotifyが用意した予算は4億〜5億ドルと言われており、今年の2月にはポッドキャスト業界をリードするGimletとAnchorの2社を3億4千万ドルで買収した。また3月には実話に基づいた犯罪ものに特化したポッドキャストの会社Parcastを買収したが、その値段は明らかにされていない。

エクとSpotifyはポッドキャストへの投資を長い目で見ていると思われ、同社の投資家たちも
その戦略に同調している。しかし、Appleが元々所有していたポッドキャストのプロダクションに投資するというニュースが流れた直後の7月16日、Spotifyの時価総額は5億ドル低下した。

しかし同社が音楽コンテンツ以外の分野で仕掛けた戦略が短命に終わったのは、決してこれが初めてではない。IT企業が新しいアイデアを試験的にローンチすることは珍しくないが、Spotifyのケースは極端だ。起業からの11年間、そしてアメリカに進出した2011年以降、利益を生み出そうと悪戦苦闘を続けている同社は、新たなコンテンツ戦略を実施しては破棄するというパターンを何度も繰り返してきた。そのうちのいくつかを以下で紹介する。

Translated by Masaaki Yoshida

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