小さな町のベーカリーと地元大学が衝突、保守派とリベラルの代理戦争に

米オハイオ州オーバリンにあるGibson’s Bakery(Photo by Dake Kang/AP/Shutterstock)



オーバリン大学は長年にわたるGibson’sとの業務提携を打ち切った

そしてオーバリン大学は2016年11月、長年にわたるGibson’sとの業務提携を打ち切った。それまで店は構内のカフェにベーカリー商品を卸していた。2017年8月、問題の学生は司法取引に応じ、加重窃盗および不法侵入未遂で有罪を認めた。彼は取引の条件として、ギブソン氏が人種による差別をしていないという声明文を書くよう求められた。「私は、Gibson’sの従業員の行動は人種的理由によるものではないと確信します。彼らはただ、未成年への酒販売を阻止しようとしただけです」と学生は一筆したためた。

事件発生からほぼ1年後の2017年11月、Gibson’sはオーバリン大学を相手に民事訴訟を起こした。大学が抗議デモ参加者にドリンクやピザをふるまい、学生たちが人種差別でGibson’sを糾弾するビラを印刷するのに構内の機材を提供するなどして、Gibson’sの名誉棄損に直接関与したと訴えた。さらに大学が「業務提携再開の交換条件として」、学生らに対する告訴を取り下げるようベーカリーに圧力をかけようとした上、Gibson’sが謝罪を求めたところ大学が拒否した、とも主張した。

これに対し大学は、自分たちは学生の行動を直接支持していないため、責任を負う立場にははないと反論した。また、ライモンド学生部長はデモを支援したわけではなく、彼女があの場にいたのはただ事態を収拾するため、デモがエスカレートするのを止めるためだったと主張した(デモに参加していた2人の学生はローリングストーン誌の取材にこの主張を裏付け、学生部長がデモを支援する発言をしたところは見ていないと語った)。

大学はまた、学生らに対する告訴を取り下げるようベーカリーに圧力をかけた、というギブソン家の主張にも異を唱えた。業務提携を停止してから数カ月後、大学はGibson’sとの取引を再開したが、「裏で手を引いたことも、学生たちへの刑事告訴を取り下げるよう求めたことも、言及したこともありません」と、オーバリン大学のスコット・ワーゴ広報部長はローリングストーン誌に語った(大学はギブソン一家が民事訴訟を起こしたあと、店との取引を永久停止したが、学生は今でも大学専用通貨「オービー・ドル」を使って、ベーカリーでショッピングすることができる)。

オハイオ州ロレイン郡の陪審員の意見は違っていた。6月、陪審は懲罰的損害賠償3300万ドル、補償的損害賠償1100万ドルを認める評決を言い渡した。その後ジョン・ミラルディ判事は、オハイオ州の損害賠償上限額にのっとって、合計2500万ドルに減額した。にもかかわらず、オーバリン大学は判決に不満だった。「陪審の判断には大変残念です。そして、この裁判に関する一般市民の意見が断片的で、時にゆがめられているのは大変遺憾です」と、カルメン・トウィリー・アンバー学長は声明を発表した。「ですが、我々は陪審の意見を尊重します。我々の本拠地である地域との関係を重要視いたします。今回の裁判から多くを学び、近隣住民とより強い絆を築いてゆこうと思います」

右派メディアは、Gibson’sの判決を手放しで大歓迎した。デイリーワイヤー紙のベン・シャピロ編集長をはじめ、ニューヨーク・タイムズ紙のブレット・スティーヴンス氏、共和党派の堅物政治評論家ジョージ・ウィル氏まで、誰もがダビデ対ゴリアテの戦いになぞらえ、小さな町の誠実なベーカリーが、政治的正義を振りかざすリベラル派にケチをつけられたと書き立てた。ウィル氏はワシントンポスト紙にも寄稿してオーバリン大学によるGibson’s Bakeryの名誉棄損をこき下ろし、大学は自らの前衛的なルーツを「汚した」と論じた。ビル・マー氏さえも判決に喜び、自らの番組でこう述べた。「社会正義の戦士らも……(政治的正義にも)どうやら代償があることにやっと気づいたようだ」

Translated by Akiko Kato

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