フジロック現地レポ トム・ヨーク、進化し続けるソロワークの現在地

トム・ヨーク・トゥモローズ・モダン・ボクシーズは26日(金)、フジロック1日目のWHITE STAGEに出演した。(Photo by Kazushi Toyota)

晴天に始まり、暴風雨で幕を下ろしたフジロック初日。しかし、トム・ヨーク・トゥモローズ・モダン・ボクシーズの開演を待つWHITE STAGEは不気味なほど静かだった。

着々とセットアップが進むステージには、クラフトワークを彷彿とさせる真っ白なテーブルがあり、その上には所狭しと機材が並べられている。定刻より少し早い21時57分に暗転すると、怒号のような大歓声。2012年にはレディオヘッドとしてフジの大トリを務めたトムだが、これから何が始まるか分からない「得体の知れなさ」とクエスチョンの大きさは、2010年のフジロックが日本初パフォーマンスとなったアトムス・フォー・ピース(以下、AFP)のライブを待っていたときの心境と近い。

後方の巨大スクリーン中央に一筋の光が浮かび上がると、深々としたお辞儀をしながら全身黒の装いに身を包んだトムと、レディオヘッド第6のメンバーにしてプロデューサーのナイジェル・ゴッドリッチ、そしてオランダのビジュアル・アーティスト=タリク・バリの3人が登場。1曲目は最新アルバム『ANIMA』に収録された「Impossible Knots」だ。ステージ頭上のスクリーンにはキーボードやシーケンサーなどの機材をせわしなく操作するトムの横顔と手元が映し出され、チキチキと刻まれるブレイクビーツ×重低音に合わせて夢遊病患者のようにトムが歌い、一心不乱に踊りまくる。この楽曲は2015年に同名義での日本初ライブとなった「HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER」でも披露されていたが、当時はまだラフスケッチ的な印象が拭えなかっただけに、ボーカルの艶もビートの粒立ちも段違いだ。


Photo by Kazushi Toyota


Photo by Kazushi Toyota

続いて、2006年の初ソロ・アルバム『The Eraser』からメランコリックな「Black Swan」を演奏。フェンダー・ムスタングベースを弾きながら歌うトムというなかなかレアな光景に驚かされたが、あのスラップ奏法は(AFPのバンドメイトでもある)フリー直伝か? 決してテクニック重視ではないけれど、なぜだか胸を打つものがある。「コンバンワー!」という彼らしい飄々とした挨拶の後は、そのままベース&ヴォーカルのスタイルで「Harrowdown Hill」と「The Clock」へと繋げていく。機械的なブレイクビーツと、ちょっぴり不器用な人力ベース。この絶妙な配合バランス/さじ加減がトムのこだわりなのだろう。フォトピット付近まで近づいたかと思えば、がむしゃらに手を左右に振ってオーディエンスを煽るシーンには思わず「アイドルかよ!」と笑ってしまった。


Photo by Kazushi Toyota

Rolling Stone Japan

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