フジロック現地レポ ジャネール・モネイ、高揚感と一体感に包まれた最高のステージ

終始ポジティヴなエネルギーに包まれたステージ

「We Love Prince!」と叫び、一旦ステージを後にしたジャネールが、「Pynk」のイントロとともにミュージック・ビデオで着用していたあの話題の衣装(山本寛斎がデザインしたデヴィッド・ボウイのコスチュームをも思い起こさせる、女性器を模した「ヴァギナパンツ」)で現れると、会場からはどよめきや拍手、笑い声などが、あちこちから湧き上がる。カナダの女性シンガー・ソングライター、グライムスをフィーチャーしたこの曲は、“ピンクはあなたの中にある”“ピンクは隠しきれない真実”“ピンクは私のお気に入りの部分”と歌う、女性のセクシャリティや女性の強さを称えたメッセージ・ソングだ。

さらにジャネールから「クィアたち」と紹介されたバック・バンドの、「人力トラップ」とでも言うべき鉄壁のアンサンブルに乗せて歌った「Yoga」、オールディーズ風のコーラスが印象的な「I Like That」と続き、「Make Me Feel」のイントロが流れ出すとひときわ大きな歓声が鳴り響く。バンドの演奏に合わせ、マイケル・ジャクソンも「かくや」とばかりのキレッキレのダンスを披露したかと思いきや、満を辞してギターを抱えるとプリンスばりのカッティングを披露した。

そして、アルバム『The ArchAndroid』に収録された「Cold War」をエレキギター1本の弾き語りにアレンジし、ソウルフルに歌い上げた後、「私たちは、世界中の女性の権利のために戦い続けなければならない。LGBTを始め、セクシャル・マイノリティの権利のため、アメリカ合衆国で暮らす黒人たちの権利のために。そして、ワーキングクラスの人たちや、移民たちのために戦い続けなければならない」と力強く呼びかけ、最後はトランプ大統領へのアンチもしっかりと表明。間髪入れずに「Tightrope」へとなだれ込み、エンディングでは終わりそうで終わらないJB’Sばりの演出を何度も繰り返して大円団を迎えた。

シリアスなメッセージを随所にちりばめながら終始ポジティヴなエネルギーに包まれた、これからのエンターテイメントのあるべき道を指し示したようなパフォーマンス。「女性の団結」を呼びかける彼女のメッセージは、決して男性との「対立」を煽るものではなく、筆者を含め私たち男性がこれからどう生きていけばいいのかをも考えさせてくれた。この日のステージはまさに彼女の言う通り、「忘れられない思い出」となるだろう。



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