フジロック現地レポ ジャネール・モネイ、高揚感と一体感に包まれた最高のステージ

ジャネール・モネイは26日(金)、フジロック1日目のGREEN STAGEに出演した。(Photo by Kazushi Toyota)

先日逝去したドクター・ジョンの「Whichever Way The Wind Blows」を挟んでトーキング・ヘッズの曲を2曲(「Houses In Motion」と「Born Under Punches (The Heat Goes On) 」)をかけるなど、開演前のBGMのセンスに1人ほくそ笑んでいたのだが、もうもうとスモークが立ち込める中、映画『2001年宇宙の旅』でもお馴染みのあの「ツァラトゥストラはかく語りき」(リヒャルト・シュトラウス作曲)が爆音で流れ出した瞬間、頭のネジが吹っ飛んでしまった。

今年、グラミー賞の最優秀アルバム賞にノミネートされた新作『Dirty Computer』を携え、初来日を果たしたジャネール・モネイ。2日前には東京・お台場ZEPP TOKYOにて単独公演を行ったばかりの彼女が、遂に苗場にも降臨したのだ。



ドラム、ベース、ギター、シンセサイザーというシンプルな編成のバンド・アンサンブルに支えられ、白で統一されたステージに満面の笑顔とダブルピースで登場したジャネール。続いて4人のダンサーが現れ、まずはアルバム『Dirty Computer』から「Crazy, Classic Life」でこの日のステージは幕を開けた。赤と黒を基調とする『リズム・ネイション 1814』期のジャネット・ジャクソンを思わせる衣装に身を包んだジャネールが、曲に合わせてポージングをするたび会場からは悲鳴にも似た歓声が湧き上がる。おどけた表情を作りながら、キャブ・キャロウェイよろしくステージを練り歩き、抜けるようなハイトーン・ヴォイスとドスの効いたラップを巧みに使い分け、あっという間にGREEN STAGEを掌握してしまった。

続いてギター・リフが印象的な「Screwed」。アルバムではゾーイ・クラヴィッツをフィーチャーしていたこの曲では、ステージ後方の巨大なスクリーンにデモの映像や、ブラックパンサー党をイメージさせる黒豹、アメリカ国旗などをコラージュ的に映し出す。さらに「I’M DIRTY, I’M PROUD」という、強烈なメッセージをバックに脚を大きく広げたジャネールのポージングでオーディエンスを圧倒。民族衣装的なケープを纏い、玉座に座りながらのラップは貫禄たっぷりで、ブラックパンサー党へのリスペクトを示唆した「Django Jane」のミュージック・ビデオを彷彿させもした。



「こんにちは!」

そう呼びかけ丁寧に二度お辞儀した後、ギターの硬質なアルペジオに導かれ、ピクシーズの「Where Is My Mind?」を引用した「PrimeTime」のコーラスと共にジャネールが話し出す。「ここに来られてとても嬉しい。日本に来るのは私の夢だったの! 今日は一緒に、忘れられないような思い出(unforgettable momory)を作りましょう」。さらに、スマホのライトを照らすようオーディエンスに促し、ペンライトに見立てて全員でウェーブすると、GREEN STAGEはえも言われぬ高揚感と一体感に包まれた。曲の後半では、サポート・ギタリストがむせび泣くようなソロを延々と弾き続け、いつしかバックコーラスがプリンスの「Perple Rain」に。それに気づいたオーディエンスたちから歓喜の声が上がった。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE