ザ・キュアー代表曲「フライデー・アイム・イン・ラヴ」知られざる7つの真実

5.この曲はローディからバンドメンバーに昇格したペリー・バモンテが初めて参加した曲の1つである

ドラマーでありキーボーディストでありバンドの結成メンバーであるローレンス・トルハーストのバンド内での立場は80年代半ばに彼の薬物依存の悪化が原因で崩れ始め、『ディスインテグレーション』をリリースする頃までに彼のクレジットは「その他楽器」と記載されるだけとなっていた。バンドのギター・テックのペリー・バモンテが正式メンバーとして加入するまでの間、ロジャー・オドネルが一時的にキーボーディストとして彼の代わりを努めた。キーボードのパートに加え、その昇格したローディは『ウィッシュ』のギターを中心としたサウンドにギタリストとしても貢献した。

「フライデー・アイム・イン・ラヴ」はザ・バーズのようなキラキラしたギターのサウンドで、間奏では超トレブリーなリード・ギターがフィーチャーされている。「曲にギター・ソロを入れるのを受け入れるには時間がかかった。俺はギター・ソロが大嫌いだったからね。前に出て『俺を見てくれ!』みたいな愚かな考えが嫌いだった。でも、今は気にならなくなったよ。音楽的に今俺たちがやっていることに合っているからね。昔だったら誰かがソロをやりたいからってだけでギター・ソロを入れるのはバカなことだっただろうけど、今ギター・ソロが曲をよりエキサイティングなものにするのに必要なものであるにも関わらずそれをやめさせるとしたらそれも同じぐらいバカなことだ」と彼は1992年にギター・プレイヤー誌に語っている。

5. ミュージック・ビデオは撮影にたった2時間しかかかっておらず、サイレント映画のパイオニアたちに敬意を表したものである

1982年の「レッツ・ゴー・トゥ・ベッド」以降、ザ・キュアーの革新的なビデオを35本以上監督をしてきたのは映像作家ティム・ポープである。すばらしい結果を生んできた長きに渡るポープとの関係にバンドは満足していた。「フライデー・アイム・イン・ラヴ」でポープはコントロールされた混沌を楽しく表現した。メンバーたちが撮影用スタジオで巨大なおもちゃで遊んでいるシーンが、昔ながらの劇場の背景幕がランダムに変わっていく前で演奏するシーンに挿入されている。「ずっとカメラを回し続けて、ただただふざけていた。小道具とかいろいろなものがあって、背景の幕も変わって。みんなで楽しんでいた」とバモンテは1992年のMTVのインタビューで語っている。ポープによると奇妙な小道具の少なくともいくつかはスミスの両親の家から借りてきたものだったそうである。

ポープの作品は多くの場合、長く根気のいる撮影になることが多いが、「フライデー・アイム・イン・ラヴ」はかなり気楽なものであった。1997年のインタビューでスミスが今までにバンドでやったお気に入りのビデオ・トップ3の1つとしてこのビデオを挙げた時、ポープはすぐにそれがたった2時間で録ったものだったことを指摘し、「だから君はそれがお気に入りなんだよ」と言った。短さは置いておいたとして、このビデオの奇抜さは曲の快感を反映している。「楽しい撮影だったし、曲を完璧に捉えているビデオだ。曲と映像が密接に絡み合っているのかもしれない」とスミスは続けた。

「フライデー・アイム・イン・ラヴ」のビデオにはサイレント映画作家に敬意を表した巧妙な演出が散りばめられている。コメディ・デュオ、ローレル&ハーディのオリヴァー・ハーディに扮した人物が歩いていたり、宇宙の背景の小道具はジョルジュ・メリエスの1907年のショート・フィルム『日食』に敬意を表している。ポープ自身も木馬にまたがってメガホンに向かって「カット!」と叫んでいるディレクターとしてこのビデオにカメオ出演している。

7.ロバート・スミスはこの曲には複雑な思いがあり、時に彼はこの曲が嫌になる

「フライデー・アイム・イン・ラヴ」の人気はザ・キュアーにとって諸刃の剣であった。ビデオが絶えず放映されていたMTVでバンドを知った人の多くは彼らがニュー・ウェーブ・ポップ・バンドだと勘違いし、それが原因でスミスは新しいファンを非難した。「『フライデー・アイム・イン・ラヴ』を好きな人はザ・キュアーの本当のファンではない。彼らは俺のCDを買ってくれない」と彼は2000年にミュージックエクスプレス誌に語っている。

名声はスミスに特に負担となっており、ツアーをすることに慎重な彼は仕事を制限するために苦し紛れにレーベルに飛行機恐怖症であると嘘の申告をするほどであった。「俺たちは世の中に知ってもらうまでに信じられないほど長い時間がかかった。でも、いざそれが実現したら、それはとても不快なことだったんだ。長年、俺には嫌いな曲があった。『おまえのせいだ。おまえが俺を有名にしやがった』って思っていたからね。『フライデー・アイム・イン・ラヴ』がその最たる例だ」と、2007年にEW誌に語っている。この複雑な思いとは裏腹に「ザ・キュアー史上最もお気に入りのシングル・トップ3」としてこの曲を何度も挙げているのだ。

Translated by Takayuki Matsumoto

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