フジロック現地レポ マーティン・ギャリックスが絶体絶命の状況から起こした大逆転劇

以降もマーティンは、「ジャパン、アー・ユー・レディ?」と叫んで観客をグイグイ乗せていく。辺りが暗くなる頃には、GREEN STAGEはさっきが嘘のような大入りに。周りを見渡すと、縦ノリのダンス・トラックに合わせて、誰もが楽しそうに踊り狂っていた。もちろん、歌心に富んだ数々のポップ・アンセムもまたマーティンの真骨頂だ。高揚感のあるコーラスを持つ「Together」では、マーティンと観客が揃って手をなびかせる一幕も。パトリック・スタンプ(フォール・アウト・ボーイ)の歌うパートがキャッチーな「Summer Days」では、ファンキーなベースラインやポラロイド写真を用いたVJが、夏色の爽やかなムードを演出していた。

剛と柔を織り交ぜたDJセットも、あっという間に終盤へ。代名詞のナンバー「In The Name of Love」で合唱を巻き起こしたあと、ロック・フェスということで(?)ホワイト・ストライプス「Seven Nation Army」を投下すると、イントロのギターリフを威勢良く歌う声が鳴り渡る。会場のムードは最高潮のまま、マーティンのDJはますます加速。そしてラストを飾ったのは、世界中のフェスでもフィナーレを彩ってきた「High on Life」だった。感動的なメロディがシンガロングを促したあと、マーティンが両手でハートマークを作った瞬間、大量の紙テープがパーンと弾け飛ぶ。そして、パフォーマンスが終わってからしばらく、あんなに激しかった雨がぱたりと止んでしまう。作り話としても出来過ぎなくらい、あまりにもドラマティックな一部始終だった。


Photo by Kazushi Toyota

以前、マーティンのブッキングを担当したSMASH・高崎亮さんは、昨年のフジでヘッドライナーを務めたN.E.R.D.やケンドリック・ラマーと並べて、マーティンを“フジロックの新機軸”として打ち出し、「ここから新しい客層も開拓したいし、フジに毎年来てる人たちのリアクションも楽しみですね」と語っていた。あの状況にあのタイミングで、あそこまで盛り上げられるアクトが他にいるだろうか。結果的にマーティンは、運営陣のチャレンジに満点以上のパフォーマンスで応えるばかりか、未曾有の大ピンチも救ってしまった。あまりにも過酷だったシチュエーションとともに、伝説のステージとして長く語り継がれるべきだろう。

ちなみに、マーティンは右足を負傷していたため、ギプスを装着してステージに立ち、片足だけで観客と一緒にジャンプしていた。そもそもこの時期、多くの有名DJがベルギーのフェス「トゥモローランド」に出演するなか、その真裏で開催しているフジロックを選んでくれた事実も忘れてはならない。無邪気な笑顔を浮かべていた彼は、本当に世界一のDJだった。


Photo by Kazushi Toyota

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE