フジロック現地レポ マーティン・ギャリックスが絶体絶命の状況から起こした大逆転劇

マーティン・ギャリックスは27日(土)、フジロック2日目のGREEN STAGEに出演した。(Photo by Kazushi Toyota)

フジロック史上でも最悪レベルの荒天に見舞われた2日目の午後。延々と降り続ける土砂降りの雨は、観客のモチベーションを容赦なくへし折ろうとしていた。キャンプエリアからGREEN STAGEに向かうと、ゲートの向こう側から長蛇の列ができあがっている。帰路につくオーディエンスの足取りは一様に重たく、表情は見るからに憔悴しきっていた。

18時半をまわりマーティン・ギャリックスの登場が近づくも、ステージ前方は目を疑うほどガラガラのまま。レインウェアを着込んだ有志も多く駆けつけていたが、正直なところ茶色い地面のほうが目立っていた。マーティンといえば、23歳の若さにして英DJ MAGのランキングで三年連続1位に輝き、ヘッドライナーとして名だたるフェスを席巻してきた世界最高峰のDJである。それだけにもどかしい光景だが、あの絶望的な雨量を思えば、もちろん仕方のない話だ。

これ以上のピンチはそうないだろう。しかし、百戦錬磨のマーティンが怯むことはなかった。開演時間の7分前、BGMとして鼓舞するように流れていたビースティ・ボーイズ「ファイト・フォー・ユア・ライト」が鳴り止むと、VJを映すスクリーンが作動してマーティンのトレードマークである「+×」が映し出され、不穏な重低音がゆっくり鳴り響く。それから4分後、アレックス・アリスの歌声をフィーチャーした「Mistaken」とともにマーティンが姿を現わし、壇上から火花が舞い上がる。持ち時間は90分、空前絶後の逆転劇がここから幕を開けた。


Photo by Kazushi Toyota

出だしからマーティンは「みんな手を上げろ!」と煽りながら、強烈に歪みまくったトラックをどんどん投下していく。オーディエンスの反応を読み取り、毎回セットリストを変えるDJスタイルで知られる彼は、自分がこのとき何を求められているのか悟っていたはず。ずぶ濡れになったオーディエンスの心情を代弁するように、ジャスティスなどフランス勢にも通じる暴力的なシンセ音が響き渡ると、鬱憤を晴らすように大きな歓声があがる。この場にいた人々の大半が抱いていたであろうヤケクソ気味のテンションと、マーティンが繰り出すバキバキの音像が絡み合うことで、GREEN STAGEはたちまちヒートアップしていった。

アッパーなサウンドをさらに盛り立てるのが、昨年の秋から導入された最新ステージ・セット「ANIMA」だ。マーティンの後ろに設置された十字型のセットは、巨大スクリーンとともにエッジーな映像世界を描きだす。左右のスクリーンはときにモノクローム、ときにカラフルに主役の姿を捉える。音の洪水とシンクロした鮮烈極まりないライティング、SF的で膨大な情報量が飛び交うVJはあまりにも圧倒的。緑色のレーザーは降りしきる雨を照らし、観客の頭上を越えて山のほうまで美しく伸びていた。



Photo by Kazushi Toyota

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