INORANが語る音楽人としてのアイデンティティ「常にドアを開いていたい」

尊い時間をどう生きるか、どう過ごすか

―FEEDERのTAKAさんは「For Now」で作曲も担当してますね。

うん。あと、Muddy ApesのギターのDEANも書いているし、u:zoのバンドでROSのヴォーカルのライモン君も1曲歌ってくれてるし。

―すごいなぁ。つまり、今回は仲間達と楽しみながら作れたと?

そうですね。決して広い世界ではないけど、自分のファミリーと作れたアルバムですね。

―なんだかとてもINORANさんらしい気がします。

しかも通好みのキャストだと思いますよ。有名どころとのコラボではないですけど。逆に今の大物同士のコラボや、フューチャリングもいいけど、海外だと、たまたま隣のスタジオに誰々がいて、コーラスしてもらったとか、あるじゃないですか? 今回はそういうノリです。それが後で音楽ファンの間でジワるみたいなのも好きで。

―そういう音楽の醍醐味・楽しみが詰まったアルバムなんですね。

そうですね。だから俺、スタジオのドアが嫌いなんです。地下のスタジオもあんまり好きじゃない。ドアなんかないほうがいいし、気になったミュージシャンには誰でも入ってきてほしいわけ。ま、誰でもはさすがに困るけど(笑)。ドアを開けて中庭が見えて光が入ってっていうのが好きですね。

―常に開かれていたい?

開いていたい、ですね。

―だから『2019』はすごくいいヴァイブスのアルバムなんですね。

ファンの方もそうだし、俺もそうだし、俺の周りのスタッフも含めたファミリーもそうだし、みんなの居場所だと思っています。心地よくて、刺激的であって、皆が自分の場所だと思える場所を作るのが最近のソロ、LUNA SEAも含めての、自分の役目なんだろうなって思っていて。ずっとそういう音楽を作り続けて、出来るだけたくさんライブをやって、皆が集える場所を提供し続ける。それのピースとして曲があるし、そういう場所を作り続けることがアルバムを作ることなんだなって思ってます。だから、この『2019』も含めて、アルバムはみんなのプラットホームみたいな感じだと思っています。

―INORANさんらしいな。皆の居場所、プラットホームを作ってあげたいっていうのは。

星の数ほどミュージシャンがいる中で、自分もポジション的には、LUNA SEAと言ったら、ベテランとか、成功したとか、恵まれた位置にいるんだと思っています。でも、世界を見渡せば、錚々たるミュージシャンがいっぱいいる。そんな中で、自分のアイデンティティはどこなんだろう、何を売りにすればいいんだろうって考えるんです。メロディがものすごく素晴らしいとか、ものすごくエモーショナルとか、自分のミュージシャンとしての存在理由は何なのか、考えたんです。その結果、テクニックでもないし、これでもないし、あれでもないし……。で、臭い言い方だけど、人に笑顔になってほしいだけなんだって気がついて。だから、お参りに行っても、俺はそれを願うんです。『今年も皆を笑顔にできますように』って。本気でそう願うんです。すごくアバウトなんだけど、俺の音楽人としてのアイデンティティってそれでしかないなって思っています。

―「このアルバムが売れますように」とは思わないんですか(笑)?

そういう想いはなくはないけど、そういうふうには願わないですね。

―いつからそうなんですか?

少なくとも若い頃は何も考えてなかったです(笑)。40代前半ぐらいからかなぁ。尊い時間をどう生きるか、どう過ごすかっていうことを考えるようになってですね。

―それは震災が影響したんですか?

そうですね。それで、2年ぐらい前かなぁ、LUNA SEAのライブでドラムソロの時、舞台袖で着替えながら、真ちゃん(真矢)を見てて、ふと思ったんです。これ、LUNA SEAの誰か一人でも欠けたらこの景色ってないんだなって。5人が元気でいることって素晴らしいことなんだなって。この時間は尊いなって思って。でもそんな時間を過ごせているのなら、精一杯生きなきゃいけないなって。じゃあ精一杯生きるためにはどうしようって考えたわけです。で、期せずして去年末にはRYUICHIが病気になって……。俺はあの時本当に寄り添っていたくて、RYUICHIのカウントダウンライブにも自分から嘆願して出演させてもらったの。でも誰もが尊い時間を積み重ねて生きてるわけだから、ストイックに生きる必要はないと思う。本当はみんなハッピーでいたいわけでしょ。それが理想。だからそういうものをサポートしてくれる、寄り添ってくれるものが音楽であってほしいし、そういうものを作る表現者でいたいんですよ。今、言葉では言ってしまったけど、本当はそういうものを表現っていうんだと思うし、そういうものを作り続けていきたいって思ってます。

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