シーアの知られざる波乱万丈人生、どん底から這い上がったポップスターの歩み

Illustration by Nigel Buchanan for Rolling Stone


彼女はデヴィッド・ゲッタに提供した「タイタニウム」を、わずか1時間未満で書き上げた。歌詞の大半はタイトルの意味の言い換えに過ぎない(「あなたに撃たれても私は倒れない。私はタイタニウムでできている」)。まるで「アイ・オブ・ザ・タイガー」だが、古びた印象は受けない。彼女から送られてきたデモを聴いた瞬間、Danielはヒットを確信したという。しかしシーアは頑なだった。「私はこんな曲は歌わない」

理由の一つは、セルアウトしたとみなされることを恐れていたからだ。また彼女はハウスミュージックが嫌いで、歌詞で描かれているたくましい女性像も彼女のイメージとかけ離れていた。ケイティ・ペリーは「ファイアーワークス」と似過ぎているという理由で採用を見送り、メアリー・J・ブライジは曲をレコーディングしながらもお蔵入りさせた。彼女は自分のヴォーカルが使われていることを、ファンのツイートで知ったという。「デヴィッド・ゲッタの次のアルバムでも歌うの?」

彼女は激怒した。「クールでセンスのいいアーティストっていうイメージを、私は必死の思いで築いてきた」彼女はそう話す。「ようやく前線から退いて裏方として頑張っていこうと決めたのに、こんな陳腐なポップハウスで名前を知られるなんて」しかし、彼女の怒りは長くは続かなかった。同曲はダブル・プラチナを記録し、彼女はその報酬でエコーパークの一軒家を購入した。

その後もいくつかヒットを飛ばした彼女は、大半のケースで自作曲の著作権使用料の50パーセントを受け取ることになっている(このディールを俗に「アーバン・スプリット」と呼ぶのに対し、携わった全ての作曲家とプロデューサーで利益を山分けすることを「ポップ・スプリット」と呼ぶ)。あるプロデューサーは、なぜ彼女がそういった有利な条件を与えられるのか不思議がっていたという。「私は自分の仕事に自信を持っていて、他の人間の手を借りる必要はないと思ってるからよ」彼女はそう答えたという。

するとそのプロデューサーはこう続けた。「でも君は20分かそこらで作曲からレコーディングまで済ませてる。それに対して、僕はそのプロデュースに数週間かけなくちゃいけないんだぜ」

「そうかもね」シーアはそう答え、さらにこう続けた。「でも私は15年かけてやっと、20分で仕事を終えられるようになったの」

事実、彼女はリアーナのナンバーワンヒット「ダイヤモンズ」をわずか14分で書き上げている。インストゥルメンタルの仮トラックに合わせ、歌うともなく曖昧なメロディーを口ずさんでいたところ、「大空に輝くダイヤモンドのように」というフレーズが自然に出てきたのだという。

「捻り出すというより、アイディアが自然と降ってきた感じだった。不思議な気分だったわ」彼女はそう話す。彼女は直感を信じ、脳の一部をリラックスさせておくことで、どこからともなく湧き出てくるメロディをすくい取る術を学んだのだ。

「あんなにもスピーディーにメロディと歌詞を考えつく人にはあったことがないよ」アデルやポール・マッカートニーのプロデューサーであり、シーアと何度もタッグを組んでいるグレッグ・カースティンはそう話す。「メロディと歌詞を同時に生み出し、それらをアレンジしていく。その行程を全部、彼女はワンテイクでやってのけてしまうんだ。彼女のペースについていくのは至難の技だよ」

バッキングトラックに合わせてヴォーカルパートを書くケースを別にすれば、彼女は通常冒頭のヴァースのメロディから着手し、サビへと向かって展開させていく。その後プロデューサーはコード進行について考え、シーアは作詞を始める。歌詞はサビ部から着手し、「ダイヤモンズ」「タイタニウム」「ダブル・レインボー」といったフレーズが示しているように、それは曲全体のコンセプトを簡潔に示すメタファー、あるいは具体的イメージでなくてはならない。サビ以外のパートの作詞はよりロジカルな作業であり、中心となるコンセプトに忠実でありつつ、メタファーを肉付けするように言葉を紡いでいく。

「以前は歌詞を過剰に分析する癖があったの」彼女はそう話す。「クールだって思われたかったから」実際のところ、彼女の書くポップソングはほとんど直感的だ。彼女はある時点でリスナーが歌詞に関心を払っていないことに気付き、サビは元気が出るようなものであれば何でもいいということを悟った。彼女が「勝利のための犠牲」と呼ぶそれを、世間は「アガる曲」とみなす。「私は大抵の場合、架空のキャラクターの視点から歌詞を考えるの」彼女はそう話す。「自分の考えを反映させるケースもあるわ。そういうのはストレートになりすぎないようにしてる」

「タイタニウム」の大ヒットによって、彼女は業界を代表する超売れっ子ソングライターの1人となった。しかし彼女は既存の出版契約を満了するため、もう1枚アルバムをリリースする必要があった。彼女はクリエイティブ面を自身が完全にコントロールすること、そしてツアーやインタビューといった一切のプロモーション活動をやらないことを条件に、アルバムを制作することに同意した。当初彼女は、そのプランに何の期待も抱いていなかったという。「どうせ売れないだろうけど、これで晴れて裏方に徹することができるようになるって思ってた」

Translated by Masaaki Yoshida

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