『アビイ・ロード』と『レット・イット・ビー』、ビートルズのラストアルバムはどちら?

『アビイ・ロード』と『レット・イット・ビー』、ビートルズのラストアルバムはどちら?David Magnus/Shutterstock

ザ・ビートルズの最後のアルバムは『アビイ・ロード』か、それとも『レット・イット・ビー』か? 哲学的なテーマの熱い論争がさまざまなレベルのビートルマニアの間で繰り広げられてきた長年の論争に終止符を打つ。

ビートルズファンであれば、ある化学薬品の力を借り、世を徹して議論を展開した経験も一度はあるだろう。バンドとして最後にレコーディングしたのは『アビイ・ロード』だが、『レット・イット・ビー』の方が時期的には後でリリースされているという主張や、史上最高のバンドによる真のラストソングは『ハー・マジェスティ』か、それとも『ゲット・バック』なのか?

 バンドの結末となったのは、「いつの日か僕は彼女をものにする」というポールの歌か、それとも「僕らがオーディションに受かるといいな」というジョンのメッセージなのか? など、哲学的なテーマの熱い論争がさまざまなレベルのビートルマニアの間で繰り広げられてきた。終わりなき論争のようだが、全くその通り。なぜならビートルズだから。ビートルズのグランドフィナーレを飾るのはどちらのアルバムか、時間をかけて検討してみよう。

まずリリース時期を比較すると、『レット・イット・ビー』は1969年に出た『アビイ・ロード』よりも後の1970年にリリースされている。一方の『アビイ・ロード』をラストとする根拠としては、(1)同アルバム向けのセッションが開始される頃には『レット・イット・ビー』の全ての楽曲は揃っていた。(2)『アビイ・ロード』の方がより従来のビートルズらしいアルバム。(3)『アイ・ウォント・ユー』は4人がスタジオに揃ってプレイした最後の楽曲。(4)(5)アルバムのラストソングとされる楽曲のタイトルは『ジ・エンド』。ただし『ハー・マジェスティ』を除く。(6)『レット・イット・ビー』の仕上がりの悪さから立ち直ろうとチームが結束した結果、『アビイ・ロード』が生まれた。(7)『ハー・マジェスティ』は楽曲として素晴らしい。(8)(9)「結局は、愛した分だけ愛される」、といった項目が挙げられる。

個人的な思い入れでは『アビイ・ロード』の方が優勢だが、冷静に時系列を追ってみると議論の余地もある。確かに『レット・イット・ビー』のほとんどの楽曲は1969年1月にレコーディングされたが、4人は『アビイ・ロード』リリース後も『レット・イット・ビー』のレコーディング作業を続行していた。ローリングストーン誌の寄稿編集者David Browneは自著『Fire and Rain』の中で、ポール、ジョージ、リンゴの3人が『アイ・ミー・マイン』をレコーディングするため、1970年1月3日にスタジオ入りしていることを明らかにした。この時点で『アビイ・ロード』がリリースされてから数ヶ月が経っている。その後リンゴは、1970年4月まで『レット・イット・ビー』向けのドラムパートのレコーディングを続けた。しかし『レット・イット・ビー』は1枚のアルバムというよりはむしろ、同名映画のサウンドトラックのプロジェクトとして進められていた。同アルバムがビートルズの公式スタジオアルバムとなったのは、図らずもバンドの崩壊とリリース時期が重なったことによる。もしも『レット・イット・ビー』が当初のスケジュール通り『アビイ・ロード』に先行してリリースされていたなら、間違いなく『イエロー・サブマリン』に匹敵する有名サウンドトラックアルバムになっていただろう。どちらのサウンドトラックアルバムにも、純粋なビートルズの楽曲が少しばかりと、映画のために作られたその他の見劣りする副産物が多く収録されている。『アビイ・ロード』に収録された『トゥ・オブ・アス』と『イエロー・サブマリン』の『イッツ・オール・トゥ・マッチ』、前者の『ディグ・ア・ポニー』と後者の『ヘイ・ブルドッグ』など、どちらのアルバムでも同様に素晴らしいビートルズの楽曲が聴ける。『レット・イット・ビー』におけるスタジオでの悪ふざけは、『イエロー・サブマリン』に収録された『ペパーランド・レイド・ウエイスト』よりも度を越している。

Translated by Smokva Tokyo

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