コンドームの所持イコール売春ではない 米で可決された法案がセックスワーカーを救う

民主党候補者の多くが売春の非犯罪化を支持している

2020年の米大統領選挙を背景に、驚くほど大勢の民主党候補者が売春の非犯罪化を支持、あるいは積極的に擁護しているが、カリフォルニア州の法制化によって実現にもう一歩近づいたと彼女は信じている。「これが争点になるでしょうね。大統領選の候補者は立場をはっきりさせなくてはならいないでしょう。彼らが歴史的に正しい判断をするかどうか、見ものですよ」

売春関連の運動に疎い大勢の人々は、警察当局がコンドーム所持を安全なセックス以外の意味にとっているとはなんともけしからん、と思うかもしれない。暴力犯罪の被害を受けたセックスワーカーの不当起訴を除外する条項もない、となればなおさらだ。だが、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが2012年に発表した報告書によると、全米主要都市で街に立って商売をするセックスワーカーたちは何十年も法律の餌食となり、泣き寝入りさせられてきた。報告によれば、もともとHIVやその他性病に感染する危険がもっとも高いセックスワーカーたちは、こうした法律のせいで結果的に自分の身を守るのに必要な手を打たなくなっている。ニューオリンズ州のセックスワーカーの約1/4が、コンドーム所持を警察に咎められることを恐れ、避妊具無しで顧客と性交していたことも判明した。

歴史的に見ても、こうした法律によって貧乏くじを引かされるのは圧倒的にセックスワーカーの中でもとくにマイノリティ――具体的にいえば、クイアやトランスジェンダー、有色人種だとヘザー・バーグ氏は言う。彼女はセントルイスのワシントン大学の助教授で、女性やジェンダー、セクシャリティ研究、それもセックスワーカーの権利を専門に研究している。強制売春の被害者もこうした法律のせいで長年危険にさらされてきた。「留置所送りにされては困ると、売春斡旋人がコンドームを持たせてくれない」からだ。

コンドームを売春の根拠と認める法律のせいでセックスワーカーがますます危険にさらされていることに加え、こうした法律がセックスワーカー以外の人々にも影響を及ぼしていることも衆知の事実だ。買い物した帰りに警察に呼び止められ、その時たまたまコンドームを持っていたというだけで売春でしょっ引かれた、というサクラメント地区の住民の話をディアンジェロ氏も聞いたことがあるという。いくつかの点で、この手の話はアッパーイーストサイドの事件とよく似ている。Nelloをはじめとするレストランでは、セックスワーカーと疑わしき女性の一人客の入店を拒否しているし、マリオットなどのホテルチェーンでは、1人で宿泊している女性客は強制売春の被害者かもしれないから注意するように、と従業員に呼びかけている。政治家の目には、独身女性の集団が公共の場にたむろしているだけで、強制売春に利用されているのでは、と疑うに十分な根拠となるのだ。

Translated by Akiko Kato

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