細野晴臣「CHOO-CHOOガタゴト」はおっちゃんのリズム前哨戦? 鳥居真道が徹底分析

アメリカン・ポップス史的には「タカ」よりも「タッカ」のほうが歴史が古いです。言い換えればソファーに座る二人が痩せていた時代が長かったということです。「ッ」が小さくなり「タカ」に近づいたリズムが流行り出すのはロックンロールの黎明期である1950年代の中頃のことでした。その頃はまだミュージシャンによってシャッフルやスイングの癖が抜けない人がいました。同じアンサンブルの中でハネてる人、ハネてない人、少しだけハネてる人が混ざりあった演奏が録音物として多く残されています。やや時代は下りますが、ジェイムス・ブラウンの「Think」は良い例で、ドラムがハネてて、その他の演奏陣はハネていないというアンサンブルになっています。他にも、ロックンロールの代表選手であるリトル・リチャードの「Tutti Frutti」は本人のピアノはハネていませんが、ボーカルはハネています。あの有名な一節「Wop bop a loo bop a lop bom bom!」は特にハネており、それがあの躍動感に寄与していると感じます。一方、他の楽器隊はスイング的なフィールで演奏しています。

「Tutti Frutti」でドラムを叩いているのはニューオーリンズが生んだ偉大なドラマー、アール・パーマーです。彼の場合は癖で演奏するというよりシャッフルとイーブンの混ざり具合を積極的にコントロールしているように思えます。例えばリトル・リチャードの「Slippin’ & Slidin’」ではハットがストレートですが、キックが微妙にハネています。また、ロックンロールの代表選手、エディ・コクランの「Summertime Blues」でもアール・パーマーがドラムを叩いていますが、得も言われぬ微妙なハネ具合で聴いていると非常にモヤモヤするものがあります。この曲なんかは特に一寸ハネてるリズムといえるでしょう。

こうしたイーブンとシャッフルが混ざった微妙なニュアンスのリズムを細野晴臣は「おっちゃんのリズム」と呼びました。また、ドラマーのスティーブ・ジョーダンもストレートとシャッフルの間で行われる押し合い、引っ張り合いこそがロックンロールの真髄だと語っています。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE