細野晴臣「CHOO-CHOOガタゴト」はおっちゃんのリズム前哨戦? 鳥居真道が徹底分析

ところで「CHOO-CHOOガタゴト」には下敷きになった曲があったようです。フレディ・キャノンが1959年にリリースした「Way Down Yonder In New Orleans」という曲です。たしかに歌い出しのメロディが似ています。そもそもこの曲はティン・パン・アレイ華やかなりし頃の1922年に出版された曲で、最初にレコーディングしたのはザ・ピアレス・カルテットというボーカル・グループでした。その後も度々取り上げられる機会があったようですが、出版から27年後にロックンロール版として大ヒットしたのでした。

「CHOO-CHOOガタゴト」はリアルタイムのブラック・ミュージックやロックを消化し、自分たちのものにした演奏であると言えますが、歌そのものはフィフティーズのロックンロールの雰囲気を感じます。実際、歌詞にも「ロックンロール」という単語が出てきます。細野の歌唱もちょっとエルヴィスがかったところがありませんか。サビの「疲れたよ」と歌った後のスキャットはエルヴィスの「All Shook Up」調だし、その前の「やめるさ」の後の裏声はリトル・リチャードの「Long Tall Sally」の真似をしているようにも感じられます。

「CHOO-CHOOガタゴト」は新幹線の歌ですが、細野晴臣は他にも乗り物の曲を作っていましたね。「CHATTANOOGA CHOO CHOO」? あれはカバーなのでカウントしません。はい、『泰安洋行』収録の「Pom Pom 蒸気」です。この曲の歌い出しは「おっちゃんのリズムでスイスイ」です。リズムの微妙なハネ具合がまさにおっちゃんのリズムです。『Hosono House』の時点で既に細野がおっちゃんのリズムを発見していたかどうかは定かではありませんが、「CHOO-CHOOガタゴト」はおっちゃんのリズムの前哨戦だったのではないか、曲が出来上がった時点ではロックンロール調だったものがキャラメル・ママでアレンジを練っていくうちにハーフタイムフィールのファンクになっていったのではないか、そんなことを妄想してしまいました。

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