米大統領選密着ルポ アンドリュー・ヤンによる奔放な選挙活動の内幕「私はネットの申し子」

立候補を決めた経緯とは?

ヤンは、トランプが大統領に就任してから数カ月の内に立候補を決意したが、最初に決意を打ち明けたのは友人でもある映画製作者のシェリル・ハウザーだった。ハウザーの製作したドキュメンタリー映画『Generation Startup』は、ヤンが設立した非営利組織Venture for America(VFA)のサポートを受けながらそれぞれのキャリアを歩み始めた6人のアントレプレナーを追っている。

VFA以前にヤンは予備校を経営し、成功した。彼は、米国のトップクラスの学生たちが卒業後に、3、4カ所の主要都市に集中する金融、コンサルティング、法律、医薬といった限られた有力産業に進んでいくのを見ていた。彼は、勝者が独り勝ちする経済の中で置き去りにされた都市とアントレプレナーとをつなぐパイプラインを構築したいと考えた。

2011年に設立したVenture for Americaは、5年の内に17の都市へ活動拠点を広げた。当時のオバマ大統領は、ヤンをグローバルアントレプレナーシップのアンバサダーのひとりに任命した。ヤンは、自身の暮らすニューヨーク市やサンフランシスコなどの大都市と、VFAのフェローが住む国内各地を行き来した。サンフランシスコからミシガン州デトロイトやロードアイランド州のプロビデンスへのフライトは、タイムゾーンをまたぐだけでなく、まるで時代や次元を超えているようだった。

「気候変動について納得させるには、アラスカの氷河へ連れて行き、どんなに大変なことが起きているかを実際に見せればよいのです」とヤンは言う。「同様にテクノロジーやオートメーション化が経済や労働者にどれほどの影響を与えているかを説明するには、オハイオ州のヤングスタウンやクリーブランド、ミシガン州デトロイト、ミズーリ州セントルイスの現状を見せれば説得力があります。」

ヤンは、2017年のほとんどを著書『The War on Normal People』の執筆に費やした。チャート上位にランクした同書の中で彼は、迫りくるオートメーション化の驚異に対し、最低所得保障制度と「人を中心として」形成される資本主義が有効な解決手段である点を主張している。2020年の選挙まで1000日以上を残した2017年後半、ヤンは大統領選への出馬に必要な書類を提出し、その数カ月後、正式に選挙キャンペーンを立ち上げた。ニューヨーク・タイムズ紙のテック関連コラムはヤンについて、「全く勝つ見込みのない候補者」と表現し、「ロボットが支配するこの世の終わりを主張する」唯一の大統領選候補者だと評した。

Translated by Smokva Tokyo

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE