ケンドリック・ラマーも支えた名プロデューサー、Bēkonとの共同制作―『The Sailor』にはケンドリック・ラマー『DAMN.』にも貢献していた、プロデューサーのBēkonが参加しています。彼とはどのように出会ったのでしょう?ブライアン:さっき話した「Yellow」のトラック、あれで初めて彼を知ったんだ。それで連絡を取って、いろいろと話をして、本人だけではなく彼のクルーもまとめてエグゼクティブ・プロデューサーに迎えようということになった。彼も同意してくれたからニューヨークで落ち合って、アルバム用にその時点で書いてあった曲をひと通り聴いてもらって、僕が録音した「Yellow」も気に入ってもらえて……というのが始まりだった。
―Bēkonとの制作はどのあたりが特別でしたか?ブライアン:彼らは総勢6人のプロデューサーグループで、その機能の仕方が見ていて本当にクールだった。全員が楽器を弾けるから、「俺はギター」「じゃあ俺はキーボードを弾くよ」「なら俺はドラムマシーンを」って感じ。それを全部コンピュータで繋いで、その真ん中にアーティスト用のマイクを立てる。要するに僕のマイクだね。あとは基本、ライブ演奏をそのまんま録音する感じ。いわゆるジャムセッションなんだ。あのときは3時間ぐらいみんなでジャムって、そこから20も30も断片的なアイディアが生まれた。そこから一段落したあと、夜にみんなで全部聴き直しながら、「OK、このアイデアはいいね。使える曲ある? どの曲のどの部分に?」と検討していくんだ。そして曲に反映させていくと。
『The Sailor』はシングル「Yellow」「Kids」「100 Degrees」に加えて、ウータン・クランのRZAが参加した「Rapapapa」、ジョージを迎えた「Where Does the Time Go」などゲスト参加曲も充実。―さぞかし充実したレコーディングだったんでしょうね。ブライアン:ああ、一緒に作業していて本当に楽しい人たちだった。文字どおり、今の音楽シーンで最高峰の才能に囲まれてやれたんだから。さっきも話したようにセルフプロデュースも楽しいし、やりたいようにやれる利点があるんだけど、ああいう人たちと組むとやっぱりね……。僕自身もビートが作れないスランプを3〜4カ月も味わったことがあるだけに、彼らの存在は実に心強かったよ。安心感もあったし、僕じゃ思いつかないようなアイディアをどんどん考えてくれるから、身を委ねてライティングの方に専念できたのはとてもありがたかった。
―ニューアルバムの音楽的なポイントもそこにありそう?ブライアン:その通り。最初は自分で全部プロデュースするつもりで、先に5曲か6曲を作って「超ドープじゃん!」と悦に入っていた。あのままだったら間違いなく、アルバムは違う方向へと進んでいただろう。その後、Bēkonと話してエグゼクティブプロデューサーをやってもらうことになって、最初から確信があったとは言わないし、実は遠慮気味な……無難な方向性に落ち着きそうな感じもあったんだけど、割とすぐにコラボレーション的な色合いが濃くなっていってね。たくさんの才能が一堂に会し、様々なアイデアをぶつけ合った結果がいい形で出たんじゃないかな。ホント、気に入ってるよ。聴いていてもわかるんじゃない?
―たしかに。ブライアン:彼らは自分たちがいいと思ったことをやる、人がどう言おうが気にしないっていう姿勢を貫いていた。それが僕にはすごく励みになったんだ。このアルバムには彼らの持ち味が十分に発揮されていると思う。僕自身、今回のアルバムを通じて一番伝えたいのは、トレンドなんか一切無視で、自分が聴きたい音を作ったということ。だから今回、今までよりも歌ってるしね。より自分らしく、より幅広く、より人と違うことをやりたいと思って。だからって、違けりゃいいってわけじゃない。自分が聴きたいと思うものを作った。それが本音だよ。
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