2019年ロック最大の衝撃、ブラック・ミディの真価を問う

ブラック・ミディ(Courtesy of Beat Records)



ブラック・ミディの三大要素

─ディス・ヒート以外で、天井さんがブラック・ミディの影響源を挙げるとしたら?

天井:ブラック・ミディの三大要素を挙げるとすると、キング・クリムゾンと、ジェームス・ブラウンないしファンカデリック、そしてカン。80年代のUKにおけるポストパンクでも、この3組が必須科目なところがあったわけですけど。

─その3組の具体的な影響について、具体的に掘り下げていきましょうか。

天井:まずはクリムゾンと言ったら、あのハードロック〜ヘヴィメタル系の鋭くて重そうなリフ。

─『Schlagenheim』の1曲目「953」など随所で聴かれる荒々しいリフは、クリムゾンで言うところの『Red』っぽいですよね。

天井:それもあるし、ポストパンクの時期と重なってた頃のクリムゾンも彷彿とさせますよね。1981年の『Discipline』から1984年の『Three of a Perfect Pair』にかけて、彼らは80年代のニューウェイブやファンクの要素を取り入れつつ、即興的なパートを拡大させることでアバンギャルドな音楽性が同居する作風にスライドしていった。その時期の成果をしっかり受け継いでるなって。



キング・クリムゾン『Discipline』の収録曲「Thela Hun Ginjeet」のライブ映像

─ファンカデリック、というかPファンクの影響も大きそうですよね。

天井:かつてブライアン・イーノがトーキング・ヘッズの『Remain In Light』をプロデュースした際、「クラフトワークとパーラメントを合体させたような音楽を作ったら面白いんじゃないか」という構想を語っていたというエピソードは有名ですが、そういう感じで、いくつかのレイヤーを含んだ上での参照というレベルだと思いますけどね。

実際、ファンクだけって曲は全然ないんですよ。「Western」という8分以上に渡る曲ではカンタベリーっぽい牧歌的なフォークで始まったかと思えば、ドローンやシューゲイザー風のギターを挟みつつ、途中アフロ・パーカッションやJAGATARAみたいなファンクを経由して、また最初のカンタベリーみたいな曲調に戻るでしょ。そんな感じで場面転換するように曲調を変えながら品雑に動き回り、あるパターンやフレーズを繰り返す際にも楽器の構成や重ね方、テンポや音の強弱、あるいはスピードをスポンテニアスに変えていく。反復ではなく反芻っていうか、そうやって落差を生み出したりグラデーションを描くことで、グルーヴやファンキーさを創出しているような感じがします。





─そして、カン。ブラック・ミディはダモ鈴木との共演ライヴ音源を出しているように、クラウトロック特有の淡々としたミニマリズムもそうだし、即興セッションからサウンドを拡張させていくカンのスタイルを強く継承している感じがします。

天井:ブリットスクール時代には学校のショウでノイ!の「Hero」を延々ジャムったりしてたみたいですね。実際、クラウトロックらしいモータリックなリズム構成は「bmbmbm」や「Speedway」など随所で聴くことができます。




天井:ただ、クラウトロックは2000年代だとダンス・ミュージックとの関わりにおいても参照の対象だったけど、ブラック・ミディはクラブ的な要素を窺わせないですよね。同じサウスロンドン出身でも、シェイムはプロデューサーにジェイムス・ブレイク周辺の人物(ネイサン・ボディ)を起用したり、エレクトロニック・ミュージックへの関心も示していたじゃないですか。でも、ブラック・ミディはそうした興味がなさそう。例えば低音/低域へのこだわりを打ち出すようなタイプとも違うし、プロダクションも特別凝っている感じがしない。

─あのラフで乾いたプロダクションは、ここ数年のトレンドとなったチルでアーバンな音像や、そういう音楽を薦めがちなストリーミングのリコメンデーション・アルゴリズムに対するカウンターとしても機能しているのかな、と思ったりもしました。

天井:たしかに、巷で流行ってるようなモダンでクリアなテイストの反対を突き進んでますよね。

─ちなみにTHE FACEの記事で、ブラック・ミディのモーガン・シンプソン(Dr)がお気に入りのドラマーとして、Pファンクを経てジャズ・フュージョンに進出したデニス・チェンバースと、カンのヤキ・リーベツァイトを挙げていて。天井さんがおっしゃるとおり影響は大きいんでしょうね。そこではさらに、現代ジャズを代表する実力派ドラマーのクリス・デイヴも選ばれています。

天井:その顔ぶれと一緒に、グレッグ・ソーニア(ディアフーフ)やザック・ヒル(ヘラ/デス・グリップス)といった2000年代のドラマーを挙げているのも納得ですよね。あと、モーガンはWu-Luというサウスロンドンのプロデューサーが発表したEP『S​.​U​.​F​.​O​.​S.』に参加していて、そこでは最近のジャズっぽい演奏を披露しています。Wu-Luはジョー・アーモン・ジョーンズ(エズラ・コレクティヴ)と共作したり、このEPにサックス奏者のヌビア・ガルシアを迎えていたりと、新しい世代のUKジャズとも密接に関わっていて。モーガンも今後、そちらのシーンで活躍するかもしれないですね。


ザック・ヒルがドラムを叩く、ヘラのライブ映像


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