マシン・ガン・ケリー、傷つきながらも必死に生きる若きラッパーの生き様

約190cm近くある身体は、タトゥーで覆われていて細く、さらに背が高く見える。彼のファッションセンスは独特だ。停電の中、アクセル・ローズがエルトン・ジョンにスタイリングされた、と想像してもらえば良い。今夜彼が着ているのは「Thrill Ryde」と背中に書かれたボロボロのアシッド・ウォッシュ・デニムのジャケット、黒と赤の花柄のシャツ、低い位置で履いている黒いジーンズ(チャックがあるべき場所には安全ピンが刺さっていて、ウォレットチェーンと、黒いバンダナが後ろのポケットに入っている)、ピンク色の丸メガネと言う出で立ちだ。ちなみにメガネは、カナダ人のレゲエアーティスト、スノーが「インフォーマー」のビデオでかけていたような物だ。その色味は、彼が歯につけているルビーの輝きとよく似ている。

MGKはこれまで、いくつかの犯罪も犯して来た。最初は14歳の時に犯した大きな罪だった。犯罪者は特定していないが、MGKのある楽曲では、彼が怒りに任せて銃を撃ったと示唆している。MGKは「法廷にいる俺を見た父の顔は、ずっと忘れられないんだ。他の仲間と一緒に繋がれていた。仲間っていうより、ただのツレだったんだけど」と語る。

さらに、持っているお金をすべて使わなければならない事態に直面した。 フロリダのバーファイトで、MGKがボトルで殴ってきたと訴える用心棒に支払わなければならなかったのだ(「400ポンドもある、俺みたいな奴のケツを叩くのが仕事の用心棒に手をかけただけで、奴は200万ドルで俺を訴えてるんだ!」。その後、ひどい貧乏に陥り、少なくとも飾りのないクリスマス・ツリーのようになったわけだが、自身のヒーローでもあるキャメロン・クロウに見出され、Showtimeの『Roadies』に出演。実入りの良い副業を手に入れたのだ。クロウはMGKをオーディションした際にすっかり魅了されたとのことで、彼のお腹にある「Almost Famous」(訳注:キャメロン・クロウ監督による『あの頃ペニー・レインと』の原題)のタトゥーのことは特に気にしなかったと言う--「彼は本当に情熱に溢れていて、まるで大きなラブラドール・レトリバーの子犬が家具で激しくじゃれていて、ぐちゃぐちゃにしているのに、それでも、みんなから愛されるような存在だったんだ」--しかしながら、圧倒的な経験のなさが「危険な学習曲線」のリスクにならないかどうか心配していたそうだ。だが彼はこれまでの慣習を破り、クロウのキャスティング・ディレクターにクリスマス・イヴの日、心からの電話をかけ、その役柄を獲得したのである。

それから彼は、生き方を改めた。27歳になり、少し成長した彼は、ハードなドラッグを自分ではやらなくなった(彼が「めちゃくちゃハイになっている」ビデオインタビューがオンラインで公開されている)。彼が2012年、エミネムの娘を「めちゃくちゃいい女」とツイートしたような、悪名高く自身をブラックリスト化するような行動をやめた。

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彼は 7歳の娘を心から愛する父親でもある。娘はティーンエイジャー時代に多くの過ちを冒してきた彼に、新たな価値観を与えたと言う。MGKは敬虔なクリスチャンであり厳格なビジネスマン、そして布教家となった父と、9歳の時から、父母が自身の人生の大部分に関与していない母の元に生まれた。「俺は言うことややること、すべてに大きく関わってくれる娘がいることで本当に救われているんだ。俺たちは協力的で、一緒にいるのがとても楽しい。俺みたいな、反抗的な態度を持つなんて想像がつかないんだ。そんな奴だったら、正直に言うと、道に置いて来てしまうと思うよ」と、MGKは語る。

Translated by Leyna Shibuya

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