マシン・ガン・ケリー、傷つきながらも必死に生きる若きラッパーの生き様

「バッド・シングス」のモデルにもなった酷い恋愛関係に終わりを告げた後、彼はポップ・シンガー・ソングライターのホールジーとともに幸せな時間を過ごすことが多くなっていった。彼らはTaoでも仲良く寄り添い、その後、ウェブスター ホールで行われたEmo Night L.Aでは2000年代のヒットを力一杯一緒に叫んでいた。MGKは「同じ部屋に、一晩で同じ国のナンバーワンを争った2人がいるように見えたって?いや、そんなセレブリティじゃないよ。ただ若さと、自由な精神がそこにあっただけだ。この関係に特にタイトルとかレッテルをつけるつもりもないけど、16歳の時に戻ったような気分だよ」と、彼女との関係を語る。

しかしながら、いつもトラブルは彼を見つけるのだ。SF映画の撮影中、警官を演じている俳優がMGKの胸をテイクの度に本気で殴った。彼がやめて欲しい旨を伝えると、警官役の俳優は我慢すべきだと言い放ったと言う。「コルソン・ベイカーとして、冷静に受け止めたよ」と、MGKは振り返る。「でも、マシン・ガン・ケリーとしてだったらあいつのケツを蹴り上げていたところだった」

そしてドライバー役の俳優は、MGKが自身の命を脅かしたと主張する。MGKは「ある特定のものの見方や存在感は、時として、他の人が言った言葉を自分のものだと認識してしまうんだ」と言う。映画制作の権威は彼のトレーラーにやって来て、「君は映画を作るためにここにいるんだよね?」と聞いた。MGK曰く、「その時俺は、“俺の曲はナンバーワンになったんだ。それでも俺は冬の極寒のシカゴで、朝5時にこのトレーラーにいるんだぜ。もちろん、この映画を完成させたいからに決まってる”って返したよ」とのことだ。

MGKは、ギグを行う時心の底から幸せだと言う。そしてある段階では、彼は未だにすべてが上手く行っているのが信じられないそうだ。それが彼のアルバム『bloom』に、カート・コバーンやジミ・ヘンドリックスといった、27歳より先の誕生日を迎えることの無かったヒーローたちに自らを重ね合わせ、自身を美化していたことについての楽曲「27」が収録されている。この曲はアルバム終盤に収録されていて、彼自身が歌っている。「俺は、“おい、これって現実がちょっと上手く行き過ぎてないか? ”と思っていた。たとえば、これってどうやったら上手くいくんだ? 人生ってたくさんの失敗があるけど、勝つにはどうしたら良くて、勝ち続けるにはどうしたら良いんだ? とか考える。ただ、この27歳という年を生き抜いてやりたかった。28歳に向けて早送りをしたいと思ったんだ」

しかし、死は彼のすぐそばまでやって来た。それは27歳の誕生日の夜、4月のことだった。そして数分間、そこに居座っていた。その時彼はプライベートギグのステージに立っていて、「スーツを着た中年の男性と若くて美人な女性」を見つめている時、胸のあたりに燃えるような、 「心臓がボコボコに強く殴られているような感じ」の痛みを覚えた。彼は6曲歌い終えたところでバックステージへ駆け込んだという。救急隊員を呼び、心臓発作かどうかの検査を行った。「みんな、俺が殴られたと思っていたんだ」と、MGKは語る。

実は、MGKが映画の撮影現場で受けたパンチが、胸部を骨折させていたのだ。医者は彼に一ヶ月のオフを命じたが、MGKはそれを無視した。その代わりに、合法大麻、アルコール、微量の「ブーム」と呼ばれるサイケデリックマッシュルームに加え、ヒドロコドンを独自の養生方法に加えた。「空きっ腹に薬を入れると眩暈がして、吐きそうになるだろ? 今、まさにそんな状態なんだ」と、ニューヨークのTaoに行く前、我々がミートボールを買おうとしていた時に彼はそう言っていた。

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Translated by Leyna Shibuya

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