韻シストBASI&TAKUが語る、『SHINE』制作秘話と現代への視点

韻シスト(Courtesy of 徳間ジャパンコミュニケーションズ)

成熟した緻密なスキルとフレッシュな勢いとレイドバックした柔軟なグルーヴの同居。韻シストのここ数年は、1999年に結成し着実にキャリアを重ねてきたからこその味わいに満ちている。20周年を迎えた昨年のアルバム『IN-FINITY』は、90年代ヒップホップのクロスオーヴァー感覚やオルタナティヴ性を、生演奏で体現する韻シストらしさや、自らが積み上げてきたスタイルにとらわれないヒップホップの自由度、現在進行の音楽から得た刺激からくる新境地など、さまざまな要素をバランスよく堪能できるアルバムになっていた。

そして、その充実した豊かな音楽性を更新するEP『SHINE』を完成させた。ライヴのフィジカルな盛り上がりにおけるピークを感じる、韻シスト流のファンキーでダンサブルなタイトル曲に始まり、オーセンティックなソウルに接近した普遍的な歌ものと現代的なプロダクションをあえて混ぜ合わせたニュータイプである“よあけの歌”まで、大きな振れ幅を持ちながら、1枚を通してしっかりとした流れとまとまりがあり、EPでフルアルバム並みの豊かな体験ができる超濃縮作品。今回はそこに込めた思いや制作過程を、BASIとTAKUに語ってもらった。

「自分たちにとって初めての試みが功を奏したことで、今回もとにかくちゃんと決めないとって、頭が固くなっていた」(BASI)

―前作の『IN-FINITY』は、それまでのキャリアで得たチャンネルや、新たに芽生えた方向性のバランスを考えて各曲を配置した作品だと、以前のインタビューでおっしゃっていましたが、今回はいかがでしょう。

BASI:『IN-FINITY』は、「幕内弁当」ってよく言ってたんですけど、メンバー同士で話し合って、おかずを考えるような感じでした。それより前は、簡単に言うと、何か起点があってそこから流動的に作っていくようなイメージだったので、『IN-FINITY』は僕らにとってはすごく新鮮なやり方だったし、それがうまくいった感触があったんです。だから、今回もデモの段階からどの曲をどこに入れるか、かなり熟考しました。

―そうして選ばれた全6曲、ということですか?

BASI:いえ、それがそう簡単にはいかなくて。何十曲とビートはあるんですけど、なかなか決まらない。何時間も机を囲んで喋っては、ビートを作る作業場に行く、みたいなことを繰り返していて、「これ埒あかんな」って。

TAKU:幕の内弁当に引っ張られて、自分たちの首を絞めたんですよね。

BASI:自分たちにとって初めての試みが功を奏したことで、今回もとにかくちゃんと決めないとって、頭が固くなっていたというか、麻痺していたというか。で、どうしようもなくなって、メンバーとマネージャーの6人で、それぞれ入れたい曲を1曲ずつ書き出して、票が集まった曲を入れることから始めようと思って。

―もう多数決しかないと。

BASI:はい。でも、それが見事に全員バラバラで。「ほらまた決まれへんやん」ってムードになったんですけど、そこでハッとしたんです。「え? これでええんちゃうの」って。ひとりひとりの挙げたこの6曲こそが、今の韻シストであり、1枚の作品なんじゃないかと。


BASI

―なるほど。となると、特に全体的なコンセプトはなかったんですか?

BASI:いえ、作品を作ろうと決めた段階で、「One for All, All for Shine」というコンセプトはあったんです。そのうえで選んだ曲がバラバラだった。それって、じつはもっとも理想的なことだなと思えたんです。

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