TikTokの急成長、一年で世界を夢中にさせた理由とは?

全知のマザーシップのようなTikTokが優れたパフォーマンスを発揮している動画を認識すると、TikTokはこうした動画とそのBGMをランクアップさせようと積極的に動く。その結果、ランキングの下にあったものが上昇するという、一種のかくはんが生じるのだ。ドゥーララマニさんは「動画の再生回数が3000から5000になると、TikTokが介入します」と推測している。

TikTokには、オーディエンスの反応がすぐにわかる動画&音楽というコンビネーションを簡単にブラウズできる、カスタマイズ可能な“おすすめ”ページのほかにも、オーディエンスの目と耳を惹きつける“しかけ”がいくつもある。TikTokには、動画に添えるための楽曲が選べる、簡単なサウンドライブラリとしてのインターナルプレイリストがある。Spotifyがニューアルバムの告知で使っているような、コンセプト動画や楽曲へのリンク入りバナー広告の追加も可能だ。さらには、おすすめの最新トレンドが一目でわかるハッシュタグキャンペーンのローンチもできる。

「TikTokは、ユーザーのコミュニティにおいて非常に大きな役割を果たしています。なぜなら、コンテンツをプッシュできるからです」とユーザーのひとりであるNiceMichaelは言う。「前にこんなことがありました。『あれ? なんでこの投稿はあまり流行らなかったのかな?』と僕のマネージャーにメールを送りました。すると、『確認してみるよ(ウインクしている絵文字)』という返信がきました。1時間も経たないうちに“いいね”の数が8万件増えていたのです。TikTokには魔法のボタンのようなものがあって、それを押すだけで世界中に動画を拡散できるんです」。

NiceMichaelが言う「僕のマネージャー」は、ラッパーにとってのマネージャーと同じではない。彼は、人気のTikTokユーザーと様々な分野のコーチをつなぐ、クリエイターズ・プログラムのメンバーなのだ。TikTokが「クリエイター・パートナー・マネージャー」と呼ぶコーチ陣は、「TikTokが掲げる目的においてとても重要な役割を担っています」とNiceMichaelは語った。

クリエイターズ・プログラムのメンバーは、定期的にマネージャーとコミュニケーションをとる。「投稿した動画のことや、改善点について話すこともあれば、動画についてアドバイスしてもらう場合もあります」とThe Bentistは解説する。「『この動画のパフォーマンスはかなりよかった。ダンス動画は受けがいいようですね。あなたのコメディ動画も好調です』のように、どれも基本的なことです。『そうだ、明日はこのハッシュタグを導入してみましょう。きっとあなたの役に立つと思いますよ』のようなことも言ってくれます」。

クリエイターズ・プログラムの参加費は無料だ。だが、伝えられるところによれば、コンテンツ制作を引き寄せるため、TikTokが金銭的インセンティブを使用したことがあるらしい。TikTokの常連ユーザーは、「Bytedance社が雇用した第三者エージェンシーがアメリカ中の22歳に呼びかけ、金銭を払う代わりに1日にひとつの動画を投稿させました。30件のコンテンツをつくるため、彼らには毎月400ドルが支払われていたのです(TikTokの広報担当は、これがマーケティングキャンペーンの一環であった可能性がある、と述べている)。さらに、現在1日100万回ストリーミングされているアーティストのひとりには、TikTokが費用を負担した上でアカウントをつくり、動画を投稿し、プロモーションする、とTikTok直々のオファーがあったそうだ。

短期間で物好き向けのプラットフォームから、YouTubeと同レベルで語られるサービスへと成長したTikTokには、いくつかの深刻な課題もある。そのひとつがオーディエンスの若さである。もっと高い年齢層のユーザーを獲得しようと、TikTokは積極的に取り組んできた。可能な限りたくさんの潜在的利用者の層にリーチしたいという理由はもちろん、13歳未満のユーザーから違法にデータを収集していたことが発覚し、すでに罰金を科せられたからだ。「YouTubeには本当の意味での視聴者層というものがありません」とシュトラウス氏は言う。「TikTokの目的もそこにあります。18歳になったとたん、アプリを使わなくなるオーディエンスではなく、もっと幅広いオーディエンスを狙っているのです」。

Translated by Shoko Natori

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