miletのラブソングを支えた5曲「自暴自棄だった私をくるりが救ってくれた」

居酒屋で歌いたい、くるりの思い出ナンバー

―3曲目はクリーン・バンディット「Rather Be (feat.Jess Glynn)」。この曲で歌っているジェス・グリンにとって最初のヒット曲で、miletさんは彼女にかなり影響を受けているそうですね。

milet:はい、ジェス先生と呼んでます。音作りに関して参考になるところがとにかく多くて、私にとって教科書みたいな存在ですね。彼女はイギリス出身のシンガーで、アメリカのポップスと違って音が単純でわかりやすい。バックのサウンドが全然しつこくないんですよ。だけど、日本のポップスと似てるところはメロディーラインの強さ。そのうえ、歌声もパワフルで力強い。

―顔も好きだと聞きました。

milet:あはは(笑)。口が大きい人が好きなんです。それと表情に人柄が出てるんですよ。絶対に優しくて体温も高そう。ハグしてほしいな。会いたいな。

9月初旬に来日しますよね。

milet:行きますよ、何がなんでも!

―クリーン・バンディットについてはどうでしょう?

milet:もちろん大好きです。日本人の耳にもすんなり入ってくるのに、J-POPとは音の使い方が全然違うんですよ。リフも何度も同じものを繰り返してるだけで、サビもAメロも同じものを使っちゃったりする。それがなぜ世界中で支持されているのか、いつも勉強させてもらってます。

―彼らはクラシック音楽の取り入れ方も巧みですよね。クラシック育ちとしても堪らないものがある?

milet:そうですね、ストリングス大好きなので。鍵盤の音もすごいですよね。ただシンセが裏で鳴ってるだけじゃない。生音と打ち込みのバランスって難しいものがあって。あんまり生音が多いと野暮ったくなるし、打ち込みが多すぎても分離して聴こえちゃったりする。最近はそのバランスを意識しながら曲を聴いています。チェインスモーカーズもギターの音色がいいんですよね。



―続いて、4曲目はくるり「犬とベイビー」。

milet:邦楽では、くるりが一番好きなんです。

―どんなところが好きなんですか?

milet:うーんと、岸田さんが好き! 岸田さんも口が大きいですよね。

―まずは顔から入る(笑)。

milet:それとやっぱり、音楽好きなのが伝わってきますよね。昔は「ザ・ロックバンド」な感じだったけど、オーケストラからジャパニーズな演歌、お祭りの音頭まで、アルバムを重ねるごとに多彩なサウンドを導入しながらずっと変化している。「Liberty&Gravity」が典型的ですけど、音作りがぶっ飛んでるし、枠を取っ払おうとしているというか。

―サウンドが変わっても常に人間臭いですよね。

milet:それは思う! あと、どの曲にも響くワンフレーズがありますよね。だから病みつきになっちゃう。

―好きな曲はたくさんあると思いますが、そのなかでこれを選んだ理由は?

milet:「犬とベイビー」は、いい意味で自暴自棄になれる曲なんですよ。岸田さんのシャウトもそうだし、少し乱暴な歌い方をしてる気がする。実を言うと、「us」を作ってるときに自暴自棄になっていた時期があって(笑)。そのとき、そんなふうになってる自分を否定しないでくれたのが「犬とベイビー」だったんです。

―詳しく聞かせてください。

milet:「犬とベイビー」は男女の曲で、彼女が上から目線で突っかかってくるんだけど、それでも好きだから振り向いてくれって犬が喚いてる歌。口ばかりの男を犬に見立てていて、その負け犬の遠吠えが自分の姿と重なってしまいまして(笑)。「もう作れない」って、キャンキャン吠えてる犬みたいだったから。

―あらら。

milet:でも、岸田さんも犬だったんだな、犬なときがあってもいいんだなと思って。吠えたいときは吠えていれば、そのうちスイッチは入れ替わる。だから、私もがんばろうと思いました。あれはすごく助けられましたね。

―そんな素敵なエピソードがあったとは。

milet:居酒屋で歌いたくなる曲ですよね。私はお酒が呑めないので行かないけど(笑)。疲れ切って全てを投げ出したいときに歌って、それでもいいよって受け止めてくれる音楽だなって。だから岸田さん、本当にありがと~~~!



―そして、最後の5曲目はドヴォルザーク「新世界より」。

milet:自分が音楽を作る人間になってから、聴く音楽もだいぶ変わってきたんですよ。それこそ、タイアップでの曲作りは別の世界に行くイメージで、制作中はその世界観に浸っていないといけない。でも一方で、自分のやりたい音楽、持っていた音楽もキープしておく必要もあるわけで。そのために必要なのが、自分のなかではクラシックなんです。『新世界より』の第1楽章ってすごく深い音なんですよ。底の深いボールみたいな感じ。そこの空気を吸うと、私は正気に戻れるんです。



―なるほど。

milet:「新世界より」って、(チェコ出身の)ドヴォルザークがニューヨークで得た経験から作られた曲で、都会的でモダンな空気感があるけど、そこには黒人霊歌が取り入れられているんですよね。彼は音楽を通じて、当時は奴隷だった黒人たちの解放を訴えていた。私は奴隷ではないけど、現状に縛られているという感覚がどこかにあって。

―そう言われてみると、miletさんの音楽には“解き放たれたい”というフィーリングがある気がします。MVでのアクションも含めて。

milet:腕をパーンって広げるやつでしょ(笑)。「us」のMVでも解放してますよ。「今回も弾けとく?」ってお決まりみたいになっていて。

―そこも注目ということで(笑)。今回選んだ5曲は、miletさんの個性がよく伝わるものになりましたね。読者にはどんなふうに聴いてほしいですか?

milet:一曲ずつどれも違うけど、私がどっぷり浸かったものばかりだし、『us』はこのプレイリストの影響をたくさん受けています。EPと聴き比べてみれば「ここを参考にしたんだ!」とわかってもらえるはずだし、ぜひ一緒に味わってみてください!

※前回のインタビュー:2019年のホープ、miletが一人にこだわる理由「孤独を知らない音楽は信用できない」





〈リリース情報〉


milet

『us』
発売中

初回生産限定盤:
CD+DVD ¥1,500+税
通常盤:
CD ¥1,250+税

CD
1.us:日本テレビ系2019年7月期水曜ドラマ『偽装不倫』主題歌
2.Diving Board
3.Rewrite
4.Fire Arrow

DVD ※初回生産限定盤のみ
「Runway」MUSIC VIDEO
milet SPECIAL SHOW CASE Vol.1 @ Billboard-Live TOKYO」
(「Undone」「inside you」「Waterfall」「航海前夜」「Again and Again」「I GottaGo」全6曲)


〈ライブ情報〉

milet first live "eye"
大阪公演:11月7日(木)梅田CLUB QUATTRO
東京公演:11月11日(月)恵比寿LIQUIDROOM

チケット料金:¥4,400
(全自由・整理番号付・税込/ 1ドリンク別)

一般発売日:2019年10月12日

◎チケット先行情報
3rd EP『us』CD封入先行

受付期間:2019年08月20日(火)12:00 ~ 2019年09月2日(月)23:59

※2019年8月21日発売のmilet 3rd EP『us』に封入のシリアルIDにてご応募いただけます。
※1つのシリアルナンバーで各公演1申込のみ、最大2枚までご応募いただけます。

公式サイト:https://www.milet.jp/

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