サザン新曲「愛はスローにちょっとずつ」と「いとしのエリー」を巡る考証

振り返ってみると、サザンの初期における、彼のそういうソングライティングの頂点はやはり「いとしのエリー」だろう。「いとしのエリー」を書く前の一時期、桑田佳祐はスランプに陥っていたとされる。1stアルバムですべてを吐き出してしまい、新曲を作ろうと思っても、過去に作った曲をなぞったようなものになってしまう。だが、ある日、「いとしのエリー」ができた。あるいは、それも想定外の「できちゃった曲」だったのかもしれない。



「いとしのエリー」を初めて聴いた時、僕はああ、これで桑田佳祐という人は一生、グレートなミュージシャンとして歩み続けるだろうと確信した。そして、40年後の今、「愛はスローにちょっとずつ」を聴きながら、その通りになった彼のキャリアを確認していることになる。去った恋人を想う男の歌詞もいかにも桑田らしく、実は40年前に書かれた未発表曲と言われたら、それはそれで信じてしまいそうだ。

ただし、ここに聴ける歌声は今の桑田佳祐でなければ発することができないものに違いない。「とりとめのない夢 ひとり寝のララバイ」という歌い出しの中に聴ける深いビブラートや丁寧なファルセットには、アーロン・ネヴィルを思い起こした。

抑制された中に、濃密な表現がちりばめられたヴォーカリゼーションが続く。「愛はスローにちょっとずつ」に続く歌詞は「黄昏(セピア)に染まるんだ」。それでも愛を抱きしめて生きる人間の、幾重にも矛盾した感情を桑田の歌声は丁寧に描き出していく。最後に辿り着く「さよならも云えず」という淋しい言葉が、なぜか歓喜に包まれているようにも感じられる。

40年後の「いとしのエリー」。そう言ってもいいかもしれないが、狙って作られた懐古的な曲では決してない。むしろ、こんな「できちゃった曲」を出した次のサザンはぐっと攻めの姿勢になるのではないか。そんな予感もこの曲は湛えている。




サザンオールスターズ

「愛はスローにちょっとずつ」
iTunes Store、レコチョク、mora他主要配信サイトにて配信中。

『SOUTHERN ALL STARS YEARBOOK「40」』
(「愛はスローにちょっとずつ」CD封入)
アーティストオンラインショップ「アスマート」にて限定受注販売
・SOUTHERN ALL STARS YEARBOOK「40」 ¥4,500
・SOUTHERN ALL STARS YEARBOOK「40」ファンクラブ限定版 ¥4,500
※1会員1冊のみ購入可能

【ファンクラブ限定版特典】
購入した会員者の「会員番号」と「名前」が印字された“BACKSTAGE PASS レプリカステッカー”
※送料無料・税込価格

予約・詳細
https://www.asmart.jp/Form/Product/ProductList.aspx?shop=0&cat=100101

公式サイト
https://southernallstars.jp/mob/index.php?site=SASJP&ima=2622

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE