映画『ロケットマン』監督が語る製作秘話、Your Song誕生の瞬間は本当に「特別」

──あなたは俳優として、マシュー・ヴォーンが製作を務めた『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や、彼の出世作『キック・アス』にも出演していましたし長い付き合いなのでしょうね。『ロケットマン』ではエルトン・ジョンのどんな部分を引き出したいと思いましたか?

多くの人と同様、僕も子供の頃からエルトンの楽曲をたくさん聴いて育った。もともと大ファンだったし、映画の製作を通して彼と知り合い、その人となりをより深く知ってますます好きになったよ。こんな言い方は高慢に聞こえるかもしれないけど、この作品づくりに関わることで、エルトン・ジョンの偉大なる伝説の一部になったというか……彼自身のキャリアに貢献できるほど光栄なことなどこの世にないよね(笑)。こんなチャンス、なかなか巡ってこないと思うし僕は本当にラッキーだ。質問の答えになっているかな(笑)。つまり、若い人の中には「エルトンの歌は知ってるけど、どんな人なのか知らない」という人もきっと多いと思うので、この映画を通してより多くの人にエルトンの魅力を知らしめられたらいいなと思っているよ。

──子供の頃からのライフストーリーを、エルトン本人の楽曲をBGMに紡いでいくという形は非常にユニークかつ、トリッキーだと思ったのですが、そのアイデアは脚本の段階から既にあった?

うん。脚本の段階から既にミュージカル映画として構築されていたよ。僕自身も『サンシャイン/歌声が響く街』というミュージカル映画を作った経験があるのだけど、音楽を通して人の内面や感情を伝えるという特殊なストーリー展開が、ミュージカルの魅力だと思う。

だって、音楽ほど万国共通の表現ってないと思うんだ。全ての垣根を一瞬にして超えられる力を持っているだろう? 例えばある一定の観念や概念、価値観みたいなものを映画のテーマに据えたとしても、それをダラダラ説明するのってもどかしくなることが多いけど(笑)、音楽を使えばほんの数秒の旋律を奏でただけで、人々の心をグラグラと揺さぶることができる。とにかく手っ取り早い表現方法だよね。しかも今回は、音楽がエルトン・ジョンで、それを歌うのがタロンなのだからね。


©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

──「鬼に金棒」ですね(笑)。今回、制作総指揮を務めたエルトン本人は「タロンほどうまく歌う人は他にいない。タロンしかいない」と彼を絶賛したと聞きました。しかも、自ら書きためていた回想録や、これまで着用してきた全ての衣装をタロンに見せるなど、全面協力を惜しまなかったそうですね。

そう。エルトンは今回、自分の中のダークな部分も包み隠さず見せていいと太鼓判を押してくれたわけで、フィルムメーカーとしては最高に興奮させられたよ。

──実際、『ロケットマン』が、ここまで見応えのある作品になったのは、なんといっても主演を務めたタロン・エガートンの熱演と歌唱力によるところが大きいですよね。演劇学校時代、周囲の薦めで出場した歌唱コンテストにて優勝を果たした経験を持つ彼は、ミュージカル・アニメ映画『SING/シング』(2016年)でゴリラの少年ジョニーを演じ、そこでエルトンの楽曲「I’m still standing」を歌っていました。しかも、タロン主演の『キングスマン: ゴールデン・サークル』にエルトンがカメオ出演するなど、何やら運命的なものを感じます。先ほどもおっしゃっていたように、あなたとタロンは今回が二度目のタッグとなりますが、彼の印象はどのようなものでしたか?

彼ほど自分の演技に対して真摯に向き合う俳優はいないね。それと、これはエルトンにも共通している部分だが彼は絶対に妥協しない人間だ。自分が納得いくまでとことんやるタイプで、そこは役者として本当に素晴らしいと思う。

彼の真髄は、「大胆さ」と「勇敢さ」にあるかな。この映画なんて、まるで窓ガラスのない高層ビルの淵に常に引っ掛けているような状態というか(笑)。一歩間違えたら真っ逆さまに落ちていってしまうようなところを、悠々と渡り歩いているような感じがするんだよね、彼の演技を見ていると。


©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE