シューゲイザーの先駆者、ライドが語る終わりなき進化とマイブラへの共感

─プロデューサーとミックス・エンジニアには、前作に引き続きエロール・アルカンとアラン・モウルダーを迎えています。特に、ナイン・インチ・ネイルズやマイブラを手がけたことでも知られるアランとは、これで3度目のタッグ(1992年の『Going Blank Again』、『Weather Diaries』)となりますね。

マーク:『Weather Diaries』で一緒に試練を乗り越え、上手くいくという信頼を得たチームだったから、また彼らと作業するということが理にかなっていたんだ。

アンディ:これまで通り最高だった! この組み合わせは、素晴らしいチームって感じがするね。

─楽曲の作り方など、前作から変化はありましたか?

マーク:いや、そこまでなかった。自分たちのデモとアイデアを持ち寄って、そのうち採用されたものもあればボツになったものもある。制作期間中に僕はスタジオを作っていたから、個人的には今回はちょっと変化もあったけどね。ちなみにそのスタジオは、すでに完成して今も使っているよ。

アンディ:スタジオでは今回、セッションの最初の方でドラムを分けてレコーディングしたんだ。それがすごく功を奏したし、おかげで素晴らしいスタートを切ることができたね。

─楽曲についてもお聞きします。まずアルバム冒頭曲「R.I.D.E.」は、ついに自分たちのバンド名を掲げていますよね。しかもループを駆使したインスト曲です。これはどのように作りましたか?

アンディ:この曲は、アルバムのスタートを飾る曲でもあり、アルバムのテーマ曲といっても過言ではない。僕らにとって、新たなイントロ・ミュージックだからそのタイトルにしたんだ。

マーク:インストというのはローレンスから出たアイデアだ。そこから全員で様々なアプローチを試していった。主旋となるメロディやコーラスをね。

─ギターのレイヤーや、コーラスなどマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを彷彿とさせますが、そのあたりは意識していますか?

アンディ:確かにあの曲は、フェンダー・ジャズマスターのトレモロアームを駆使しているし、ケヴィン・シールズからの影響を指摘するのは理解できるよ。それとオープン・チューニングはサーストン・ムーア(ソニック・ユース)が編み出したものだ。僕はこのアルバムの全ての曲で、このチューニングを用いているよ。

※アンディは人生を変えたアルバム5枚にマイブラの『Isn’t Anything』を挙げ、本作におけるヒップホップからの影響と、バンドのドラマーであるコルム・オコーサクの貢献度の高さについて指摘している

マーク:僕自身はマイブラを意識してなかったけど、レーベルメイト(クリエイション)だった90年代は、彼らのことが大好きだったよ。人としてもバンドとしても素晴らしかったからね。



─先行曲「Future Love」は、前作に収録された「Charm Assault」にも通じるキラーチューンです。

マーク:うん。アンディのデモの中にあって、ひときわ素晴らしいトラックだったからすぐにアルバム候補となったね。

─“夢中になり過ぎて 何から何まで間違っている”、“ああ、君のおかげで僕は動き出した そう、君が僕を駆り立ててくれるんだ”など、恋愛が始まったばかりの高揚感が伝わってきますね。

アンディ:そう、シンプルなラブソング。付き合う前って、自分の頭の中だけでその恋愛関係を想像するだろ?で、そのイメージはいつだってパーフェクトなんだ!

─もう一つの先行曲「Repetition」は、これまでのライドになかったタイプの曲で、個人的には中期のYMOを彷彿とさせます。実際は、どんなところからインスパイアされて出来た曲ですか?

アンディ:この曲の歌詞は、バスキアのインタビューから感銘を受けている。その中で彼は、アートスクールでの日々やミニマリズムのコンセプト、中でもジョン・バージャー(小説家)やブライアン・イーノからの影響について語っているんだ。




─「Kill Switch」はポスト・パンクを彷彿とさせるソリッドな楽曲です。“Kill Switch”とは、なんのメタファーですか?

アンディ:自分がうんざりしている誰か、自分を放っておいてくれない人が発する音を消すって意味さ。

─静と動を行き来するようなダイナミックな楽曲「15 Minutes」の「15分」とは何を意味しますか?

アンディ:これは、アンディ・ウォーホルの『15 minutes of fame(15分の名声)』を引用している。“未来の世界では、誰でも15分間は有名人になれるだろう”という有名な予言だ。ここでは、“訴訟を起こしてバンドの立場を悪くするような真似は、そいつにとっては束の間の名声かもしれないが、死ぬまで後悔するほどの過ちになりかねない”ということを歌っているんだ。

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