ファンクはプレーヤー間のスリリングなやり取り? ヴルフペックを鳥居真道が解き明かす

趣味性が高い一方で、ポップスとしてのファンクを評価していることにもシンパシーを感じました。イギリス発祥のレア・グルーヴ、あるいはディープ・ファンクといった「かっこいい」括りからこぼれ落ちるような、ベタ過ぎてちょっと様になりにくい類のファンクやR&Bのヒット曲にインスパイアされたことを彼らは明け透けにしています。もちろんヌメロやミスター・ボンゴといったクールな再発系のレーベルからリリースされるオブスキュアな音源も良いけれど、シスター・スレッジ最高じゃん…と言いたいタイプのオタクにとって彼らの活躍は福音のように感じられたりもしました。

日本において彼らの音楽は「ミニマル・ファンク」と紹介されがちですが、そもそもファンクには、アートワークや衣装などビジュアル面では過剰な部分があるものの、「Less is more」という美学が内包されていると考えているので、個人的にこの形容にはあまりしっくりきていません。「スピード・パンク」、「ラウド・メタル」、「サイレント・アンビエント」みたいなものと一緒じゃないかと思うのです。それで言ったらクルアンビンのほうがミニマルじゃね? 3人だし…と思ったりもします。ちなみにヴルフペック自身は「ローボリューム・ファンク」という言い方することがあります。

随分と前置きが長くなってしまいましたが、本題の「Disco Ulysses(Instrumental)」に進んでいきましょう。この曲は、初期のプリンス、シック、マイケル・ジャクソンを混ぜたような甘酸っぱいテイストのディスコ調の曲となっております。70年代の山下達郎的な雰囲気も感じられます。元々ジャックがヴルフモン名義で2014年にリリースした「My First Beat」という曲を改作したものだそうです。

イントロでちゃきちゃきした歯切れの良いカッティングを披露するのはプリンスを生んだミネアポリス出身のコリー・ウォンです。彼はストラトキャスターを抱え、フロントとセンターのハーフトーンになるようピックアップ・セレクターを「4thポジション」にし、逆アングルでピックを持って、手首を柔らかく振り回しながら素早くストロークすることで、パーカッシブで鈴っぽい軽やかなサウンドを生み出しています。

ナイル・ロジャースよろしくステレオのセンターに陣取ったこのフレーズ、ちょっと際どく感じません? 拍子が取りにくくリズム迷子になってしまいそうです。これはなぜか。フレーズの出だしが4拍目のウラで、続く音も1拍目のウラになっており、1拍目のオモテが休符になっているからです。これはハードル走で利き足じゃないほうの足で踏み切るようなもので、ややトリッキーといえます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE