音楽界のアウトサイダー・ヒーロー、ダニエル・ジョンストンが逝去 享年58歳

1994年、ジョンストンはメジャーレーベルのアトランタとレコード契約を交わし、アルバム『FUN(原題)』を制作した。この作品ではバットホール・サーファーズのポール・リーリーと共演している。しかし、この作品のセールスは1万2千枚前後で、メジャーシーンから姿を消すこととなった。その後、彼は様々なアーティストとコラボレーションを続けた。ハーフ・ジャパニーズのジャド・フェア、ヨ・ラ・テンゴ、スパークスホースのマーク・リンカス、オッカービル・リバーなど枚挙にいとまがない。加えて、フレーミング・リップス、ベック、ウェイツなど、多くのアーティストが2004年にジョンソンのトリビュート・アルバムに参加した。

彼の最後のアルバムとなった『Space Ducks(原題)』は2010年にリリースされた。2015年、ラナ・デル・レイがインディー界のレジェンドとなっているジョンストンを描いた15分のショートフィルムで、彼の「Some Things Last a Long Time(原題)」をカバーした。デル・レイとマック・ミラーは、キックスターターでの同作品のクラウドファンディングに1万ドルを寄付している。ジョンストンについて聞かれたラナ・デル・レイは、「一つだけ言いたいことは、彼が自宅でアートを生み出している間――彼は毎日曲を作っていると言っているわ――、彼は多くの人の人生に変化をもたらしているという事実を、彼自身に知ってほしいということなの。彼は私の人生を変えたもの」と答えた。



2017年の夏、ジョンストンは最後のツアーに出ることを発表した。そしてウィルコ、ビルト・トゥー・スピル、フガジがバックバンドを務める、と。同年、ウィルコのフロントマン、ジェフ・トゥイーディーがニューヨーク・タイムズ紙に「インスピレーションの源として、彼にはかなり世話になっているからね。ダニエルは精神疾患を物ともせずに創作活動を続けてきた。精神疾患が彼のアートの根源じゃない。彼は自分が戦い続けている敵を素直に認めて、世間の過剰な注目を集めることなく、正直に作品に描写してきたのさ」と述べた。

同じニューヨーク・タイムズ紙の記事内で、ジョンストンは自分が最後のツアーの出ると言ったことに自分が驚きつつも、音楽作りは止められないと語っている。「止めてしまったら、何もすることがなくなってしまう。きっと全てが止まるだろうね。だから絶対に止めない。ずっと続けないとダメなんだ」と。

ジョンストンの兄によると、彼らの父親ビルが他界した2年ほど前から、父親の自宅に残されていた未公開の録音物や書類が大量に見つかった。その中にはジョンストンの父親が書いた手紙もあり、これはジョンストンの精神疾患に新たな光を投げかけた。ディックは「彼の葛藤は僕が感じていた以上に大変だった」と言った。

そして、「発表された楽曲と同じくらい未公開の楽曲がある。彼が残したものをこれから長い時間をかけて整理していくつもりだ。ファンとシェアすべき作品がたくさんあるからね」と続けた。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE