エアロスミスのメンバーが解説する、ラスベガス公演セットリストの全貌

「ストップ・メッシン・ラウンド」(フリートウッド・マックのカバー、2004年)

タイラー:この曲ではジョーが必死に歌っているし、俺をエアロスミスに加入したいと思わせてくれたバンド、つまりフリートウッド・マックへの感謝の印でもあるんだ。

ウィットフォード:いつからこの曲をプレイしているのか、もう覚えていないけど、けっこう前からやっている。この曲でジョーは歌声を披露できるし、俺たちがこのブルース曲を演奏している間に、スティーヴンは喉を休めることができるんだ。この曲を何年もプレイし続けているものだから、あのシャッフルはもうお手のものだよ。やっていて本当に楽しい曲さ。ラスベガスの音楽監督はこの曲でサックスを吹くし、けっこう大掛かりなジャムセッションになっている。ソロもたくさんあって、ジョーも俺もソロを弾く。スティーヴンはハーモニカで参加する。それにキーボードのバックもソロがある。ほんと、めちゃくちゃ楽しい曲なんだよ。

「クライン」(1993)

ハミルトン:この曲に対して俺はニュートラルな立場だ。お気に入りでもないし、すぐにセットから外しても構わないし、プレイするのも吝かではない。この曲の背景にある物語の始まりは、それまでずっと俺たちの曲を放送していたラジオ局が、パール・ジャムやニルヴァーナが出てきたら、いきなり「もうラッシュやエアロスミスやピンク・フロイドはかけない」って言い出した現実がきっかけだった。でも、俺たちは新しい音楽ができたことを何とかして世間に知らせたかった。そこで、俺たちの曲がトップ40に入るか賭けてみたのさ。この曲はその中の一つで、多くの人はロック曲だと思っているようだが、俺には本物のロック曲には聞こえない。曲作りの観点で見るとハイクオリティで、本当によく出来た曲だし、歌詞も、メロディも全部いいとは思う。この曲がトップ40に入ってくれてありがたかったし、おかげで他の曲もヒットした。そういうヒット曲がなければ、俺たちの曲がラジオで流されることもなったからね。

ウィットフォード:この曲はものすごい人気だった。この曲のMVは、とにかくテレビのパワーを見せつけるものだ。本当に、ものすごくパワフルなんだ。MTVは自分たちがそこに登場するなんて思っていなかったものだし、俺たちには馴染みのないものでもあった。でも(A&Rの)ジョン・カロドナーが(ディレクターの)マーティ・コールナーと俺たちを結びつけた。ジョンこそがエアロスミスのMV露出の影の仕掛け人さ。俺はトム(のこの曲をセットに入れ続ける意見)に賛成だね。俺自身は、自分たちの音楽カタログに埋もれている曲も発掘したいと思うし、いつも自分がやりたい曲ができるわけじゃないから。まだ一度もコンサートで演奏していない曲がたくさんあるし、ライブで演奏してみたい曲もたくさんあるし、そんなふうに思うようになってから何年も経っている。押し入れから出してステージで虫干しすべき曲がたくさんあると思う。「リック・アンド・ア・プロミス」とか、「シック・アズ・ア・ドッグ」とか、「ゲット・ザ・リード・アウト」とか、「戻れない」とか、「ノー・サプライズ」とか。この中の1曲でも今回のセットに入れば、俺は最高にハッピーだ。

「リヴィング・オン・ジ・エッジ」(1993年)

ハミルトン:これは大ファンと言えるほど好きな曲だ。好きな理由は「折れた翼」と同じ。最初にダークなパートがくすぶったあとで、ロック曲らしくはじける。この曲には絶対に飽きないドラマがある……ドラマの可能性があると言ったほうがいいかな。歌詞はこれから先、永遠にどの世代にも受け入れられると思う。国中の人間にダメージを与える強力なロクデナシはいつの時代も出現するし、その点でこの曲は人々の心の琴線に触れるんじゃないかな。

ウィットフォード:これはマーク・ハドソンが俺たちによこした曲だ。彼とは頻繁に仕事をしていたからね。彼からこの曲が送られてきたときのことを覚えているし、本当にきっちり作り上げられた曲だった。この曲のデモも作っていたし、マークはスティーヴンの声真似で歌っていたよ。初めて聞いたときの俺たちの反応は「うわー、これ、マジでクールじゃないか!」だったね。そしてレコーディングを行った。これは非常にユニークな曲だし、個人的にかなり気に入っているよ。

「支配者の女」(1974年)

ハミルトン:スティーヴンが「Lord of Thighs」(太ももの支配者の意)という言葉を思い付いたのが面白いと思う。メンバー全員がこの曲をやるのが楽しくて仕方ないんだ。ベースにとってはかなりチャレンジングな曲だ。忍耐力勝負のところがあってね。2枚目のアルバムに収録されているかなりシンプルなロック曲なんだけど、これを上手に弾きたいという俺のプライドもあるんだよ。

ウィットフォード:これもセットに戻ってきた曲の一つだ。こういう戻ってくる曲もあるし、セットから出たり入ったりする曲もあるんだ。1〜2度プレイすると飽きてしまって、他の曲と入れ替えるのさ。

「ホワット・イット・テイクス」(1989年)

ハミルトン:「ホワット・イット・テイクス」は最高だと思う。バラッド曲とは言え、感傷的じゃない。この曲の感情はかなりリアルで、コード変更にとても美しい部分があるんだ。この曲は何度プレイしても、ものすごい集中力が必要で、集中力が続くとちゃんと弾くことができる。でも、少しでも集中力が欠けるとちゃんとできない。だから、俺はこの曲を弾くときはいつも、自分の能力マックスでやりたい。まあ、その日のコンディションを計るテスト的な曲でもあるかな。

ウィットフォード:これも最高の曲で、スティーヴンにとっては広い音域を披露するのに最適の曲だ。最近のスティーヴンは音域が少し狭まっているから、歌うのが少し大変な曲だけどね。でも、これは俺のお気に入りの曲だよ。

Translated by Miki Nakayama

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