日本のバンドが海外進出を果たすには? トップランナーに訊く成功までの道のり

東京の路上から世界へ、そしてまた日本へ

─ところで幾何学模様は、結成時にはどんなコンセプトがあったのですか?

Go:「ミュージシャンっぽくないことをやろう」と思っていました。日本の若いバンドはみんな上手いので、逆に「あまり練習しなくても出来る音楽をやろう」と。なんていうか、「頑張ってる感」があるバンドが好きなんですよ(笑)。プロフェッショナルなステージというよりは、ステージ上で試行錯誤している感じが伝わってくるような。ハプニングが常にあって、「大丈夫かな」って思うような感じ(笑)。それが欲しかったので、あまりバンド経験のないメンバーを集めましたね。

─最初はどんな活動をしていたのでしょうか。

Go:高円寺や高田馬場の路上で演奏をしていました。その頃は、「楽曲を演奏する」というよりも、ひたすら音を出し続けるみたいなことをしていましたね。そのうち、少しずつメンバーが増えていって。なんでもいいから楽器を持ち寄って、一緒に音を合わせているうちに少しずつカタチになっていきました。コミュニティというか、ミュージック・コレクティブみたいな……誰でも入ってこられる音楽家集団みたいになったらいいなと思っていたのですが、その頃はまだ海外のことは全く考えていなかったです。

─最初は女性ボーカリストもいたんですよね?

Go:ただ、それも固定というわけではなくて。レコーディングするまでは、友達や、その兄弟、路上やライブハウスで会った人たちに「今度、路上で演奏するから参加しない?」みたいに誘いながら活動していたんですよ。お客さんなんて、全然いなかったです(笑)。立ち止まって観てくれたり、「面白いことやってるね」って声をかけたりしてくるのは、大抵は音楽マニアみたいな変な人たちだけです。



─そこから、自分たちのサウンドはどう変化していきましたか?

Go:1stアルバム『Kikagaku Moyo』(2013年)の頃は、本当に何もわからなかったんですよ。どうやってレコーディングするのかも。オーバーダビングって何のことなのかよく分からなかったし。でも、感覚的に「こういうレコードが作りたい」という気持ちがあって。それをもうちょっと言葉でも言えるみたいな。例えばパンニングを覚えて定位を整えたり、ギターをもう少し引っ込めるならリバーブを多めにかけるといいとか(笑)。

─1stテイクで完パケしたと聴いて驚きました。

Go:テイク数を抑えるやり方は今も変わらないですね。これまでずっとプロデューサーもつけてなくて、エンジニアさんと相談しながら試行錯誤してきました。


『Kikagaku Moyo』収録曲「Dawn」

─昨年リリースされた『Masana Temples』は、どこかブラジルっぽさがありました。

Go:ちょうど南米の音楽にハマっていた頃で。今、「Guruguru Brain」を手伝ってくれているポルトガル人のインターンと一緒に住んでいて、彼がいるとブラジルの音楽がよくかかっているんです。もちろん、僕らがボサノヴァをやろうと思っても絶対そうならないじゃないですか(笑)。言葉もリズム感も違うし。でも、その「違和感」が面白いと思わせるには、どうやってアプローチしたらいいか、みたいなことがインスピレーションの元になったりしましたね。

─色んなジャンルの音楽が混じり合って、もはやカテゴライズ不能になっていく感じは音楽シーン全体の流れでもありますよね。

Go:そうですね。例えばエレクトロ系のイベントにもドローンのバンドが出ていたりして。このジャンルでは、今まではこういう人たちがカッコいいとされていたのに、キュレーターやメディアが「こういうのもいいんじゃない?」と提示していくことで、どんどんジャンルが溶解して新しい文化が生まれているのは感じますね。


『Masana Temples』はジャズを軸に越境的なサウンドを奏でるポルトガルの奇才、ブルーノ・ペルナーダスをプロデューサーに迎えてリスボンで制作された。

─ところで、今回のツアーではOGRE YOU ASSHOLEとの共演もありますよね。彼らもサイケデリックというものを日本人独特の感覚で捉え直していて、アプローチやアウトプットは違えど、ある意味では幾何学模様とアティチュードを共にする部分もあると思うんですよ。

Go:楽しみです。

─幾何学模様は「サイケデリック」をどういうものだと定義していますか?

Go:サイケデリックの良さって、さっき話したように「下手でもいい」みたいな自由なところにあると思うんですよね。テクニックや様式じゃなくて、マインドの部分。音楽を聴いたり演奏したりした時の精神状態をどう変容させていくか……どれだけ違う場所へ持っていけるかに重きを置いているのが、サイケデリックだと思うんです。そこを僕らは大事にしていて。「こういう音楽をやっています」「こういうメッセージを伝えたいです」というよりは、聴いた時の感覚がどう変化していくかとか、そういう部分にフォーカスしてる。それさえ出来ていれば、下手だろうがどんな音を出してようがいいと思うんですよね。そういう自由な部分がサイケなのだと思っています。





幾何学模様 JAPAN TOUR 2019

【東京公演】
日程:2019年10月5日(土)
会場:Shibuya WWW X
Special Guest:OGRE YOU ASSHOLE
時間:open 17:00 / start 18:00
料金:前売り¥4,000(ドリンク代別 / オールスタンディング)
https://www-shibuya.jp/schedule/011360.php


【大阪公演】
日程;2019年10月7日(月)
会場;Shangri-La
Special Guest:んoon
時間;open 19:00 / Start 19:30
http://ldandk.sub.jp/shangri-la/live/live.cgi?DATE=201910?MODE=MONTH

【名古屋公演】
日程;2019年10月8日(火)
会場;Club Upset
Special Guest:De Lorians
時間;open 19:00 / Start 19:30
http://www.club-upset.com/home/event/kikagaku-moyo-japan-tour-2019/

【朝霧JAM 2019】
日程;2019年10月12日(土)13日(日)
会場;富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
※幾何学模様は13日に出演
https://asagirijam.jp/

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