日本のバンドが海外進出を果たすには? トップランナーに訊く成功までの道のり

今年10月から来日ツアーを行う、幾何学模様のライブ写真(Courtesy of MAGNIPH)

幾何学模様という、ちょっと不思議な名を持つバンドをご存知だろうか。肩まで伸びた黒髪にヒゲという、まるで70年代からタイムスリップしてきたような風貌の5人組。シタール奏者を含む彼らは現在、海外に拠点を移し、ブラック・エンジェルズが主催する「Levitation(旧・Austin Psych Fest)」や、砂漠で開催される「デザート・デイズ」など、名うてのサイケ・アクトが一堂に会するフェスに毎年のように出演し、最近ではクルアンビンやコナン・モカシンとともにツアーを回るなど、「日本人にしては〜」といった枕詞抜きで、インディバンドとして「理想的な活動」をしているのだ。

そんな幾何学模様がこの度、およそ2年ぶりに来日。OGRE YOU ASSHOLEやんoonらを迎えて、10月初旬より東京、大阪、名古屋にてライブを行うほか、朝霧JAM 2019にも出演するという。「サイケデリック」を独自の視点から捉え直した唯一無二のパフォーマンスは、今後「語り草」になること必至だ。

高田馬場の路上でひっそりとスタートし、楽器演奏もビギナー同然だった彼らが、何一つツテもなく海外でひとかどの存在になるまでには、一体どのような試行錯誤があったのだろうか。バンドリーダーでドラマーのGo Kurosawaに、そのプロセスやノウハウを詳しく訊いた。


左からDaoud Popal(Gt)、Ryu Kurosawa(Sitar,Organ)、Go Kurosawa(Dr,Vo)、Tomo Katsurada(Vo,Gt)、Kotsuguy(Ba)

幾何学模様は2012年夏、東京の路上でのバスキングから活動をスタート。通算4作目の最新アルバム『Masana Temples』(2018年)は「Discogsで最も集められた日本産レコード 2018年〜2019年上半期」の首位を獲得。世界各国でソールドアウト公演を連発し、アメリカ最大級の音楽フェスティバル「ボナルー」、ヨーロッパ3大フェスのひとつ「Roskilde」にも出演を果たすなど、日本のサイケデリアを代表する存在となりつつある。また、メンバーのGoとTomoは、自身のレコードレーベル「Guruguru Brain」をアムステルダムを拠点に運営。2014年以来、幾何学模様を含めた多くのアジアン・アーティストの作品をリリースしている。


「自分たちがやりたいこと」を貫いた先に

─単刀直入に伺いますが、多くのインディバンドにとって憧れのフェスであるLevitationやデザート・デイズに、一体どうやって出られるようになったのですか?

Go:最初は僕らも都内のライブハウスとかに出てたんですよ。でも全然お客さんが集まらないし、この状態じゃ友人も誘えないというか、「バンドやってます」と胸張って言えないなと思って(笑)。やっている音楽も分かりづらいし、ライブハウスに出るためにはノルマも払わなきゃいけない。それをこのまま続けていても、意味がないんじゃないかと思うようになっていったんです。

─なぜ、人が集まらなかったんでしょう?

Go:僕らが日本で活動していた頃はシティ・ポップとかが主流でしたけど、そういう音楽を正直カッコいいとは思えなかったんですよね。自分たちがやりたいこととも全然違うし。だったら、そこで真っ向勝負するのではなく違う方法を考えようと。

それでまずは、「TOKYO PSYCH FEST」と銘打った自主企画のイベントをやり始めました。それもDIY精神というか、アートワークやTシャツのデザインなどを、有名な作家にお願いするとかではなく、自分たちの身近な人に手がけてもらったんです。少しくらい下手でも、それが自分たちの好きな感じだったらいいよね、みたいなノリで。フェスの価格設定にしても「どれだけライブに人が集まる文化を作るか?」みたいなことを考えながら決めていました。

─例えば?

Go:(日本の)ライブハウスって、普通は平日だと2500円、ワンドリンク600円で、Tシャツの値段は2000円以上とかするじゃないですか。そんな「5000円の娯楽」ではなく、チケット1枚500円とか1000円くらいで楽しんでもらうにはどうしたらいいかと。自分たちの音楽にしても、とにかくやりたいことをちゃんと明確にすることは意識していましたね。「これは無理」「こういうことはやりたくない」「これは好き」みたいな感じで一つ一つ検証していく中で、段々と方向性も定まっていったんです。

そのうち外国人のお客さんがどんどん増えてきて。そこからですね、「もしかしたら海外で通用するかも」と思うようになったのは。それで、(2013年に)初めてオーストラリアでツアーをやったのが大きなきっかけになりました。


米ウィスコンシン州ミルウォーキー撮影の映像シリーズ「Hear Here Presents」でのライブ映像。「In A Coil」「Kogarashi」「Green Sugar」の3曲をプレイしている。

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