人は試練をどう乗り越えるのか? 池松×蒼井×井浦が語る、圧倒的な人間道を描いた映画『宮本から君へ』

映画『宮本から君へ』の出演者(左から)蒼井優、池松壮亮、井浦新(Photo by Takanori Kuroda)

ついに新井英樹の原作『宮本から君へ』の後半部分を作品化した、映画『宮本から君へ』が、9月27日(金)より全国スクリーンで上映される。「映像化困難」とまで言われた本作は、テレビ・シリーズと同じく真利子哲也監督、池松壮亮、蒼井優をはじめとする「宮本愛」に溢れるスタッフたちにより誕生した。ローリングストーン ジャパンは、出演者の池松、蒼井、井浦にインタビューを敢行。

何かとんでもないものを観てしまった。しばらくの間、その余韻の正体すら分からぬままただ呆然とそんなことを考えていた。

新井英樹の原作『宮本から君へ』が、テレビ・シリーズと同じく真利子哲也監督、池松壮亮と蒼井優のキャストによってついに映画化。原作の後半部分を描く本作では、主人公・宮本浩とその恋人・中野靖子(蒼井)がとてつもない「試練」にさらされ、それをどう乗り越えていくかを容赦ないタッチで描いていく。

圧倒的な暴力によって「女性としての尊厳」を踏みにじられる靖子と、そんな彼女のため「絶対に負けられない喧嘩」に挑んでいく宮本。これまで「映像化困難」と言われていたそれらのシーンを、文字通り「体当たり」で演じる2人の役者と、それを支える共演者やスタッフの熱量にただただ圧倒される。バブル期に連載され「最も嫌いな漫画」とまで言われた本作のメッセージは、平成から令和へと時代が移り変わった今だからこそ、我々の心に深く突き刺さってくるのかもしれない。

人は、乗り越えられないような試練が目の前に立ちはだかった時、それにどう向き合ったら良いのだろうか。池松と蒼井、そして靖子の元カレ・風間裕二を演じ、2人の間で不思議な存在感を放つ井浦新の3人に語り合ってもらった。

──心にずっしりとのしかかってくるような、非常に重厚かつ見応えのある映画でした。新井英樹さんの原作は1990年から連載がスタートしているのですが、取り扱っているテーマはとても現代的です。例えば「ハッピーエンドの“後”の男女」を描いていたり、女性の人権の問題をシリアスに取り扱っていたり。「自己肯定感」を持ちにくい世の中で、自尊心を持つことの大切さについても訴えているように感じたのですが、皆さんはこの作品に対してどんな思いで取り組んだのでしょうか。

池松:世の中がどんどん便利になっていく中、生きることもラクになってきているじゃないですか。その一方、家族間で殺しあう事件が頻発したり、日本では年間15万人もの自殺者がいる状況だったり。はっきり言って、異常事態だと思うんです。そんな中で、この『宮本から君へ』という作品は、もう一度「生きる」ということの厳しさに立ち返るべきではないか、これまで生きてきた「罪」や、明日から生きていくことの「義務」、言葉にすると簡単だけど、明日への「希望」……そういうものを、この宮本という人物を通して感じるべきではないか、そう訴えている作品だと感じました。彼ほど切実で、痛みを伴う人間であれば、何かそこに説得力を持たせることが出来ると信じながら演じていましたね。

──池松さんは以前から原作を読んでいて、TVドラマの時からこの役を演じるのが悲願だったと聞きました。

池松:とりあえず今は、こうして「決着」が付けられてよかったと思っています(笑)。ほんと、映画が完成するまでの間、びっくりするほど逆境が続いたんですよ。「ええ!?」みたいなことが沢山あって……。いろんな情念があの原作に取り憑いていて、それが映像化を妨げようとしているんじゃないかと思うくらいでした(笑)。


©2019「宮本から君へ」製作委員会

蒼井:難産だったね(笑)。私は原作を読んで、宮本というより原作者の新井さんが「かっこいいなあ」って思いました。まるで書き殴っているかのような言葉が並んでいるじゃないですか。「つぶやき」ではなくて「叫び」というか。世の中に対してというよりも、自分自身に刻むかのような言葉がずっと続いているのがすごいなって。

池松:確かに。

蒼井:今、ここまでの言葉を綴っている人って、なかなかいない。少なくとも私はお会いしたことがないですね。だからこそ、今出すべき作品なのかなと。連載当時は、この漫画を煙たがっている人も多かったと聞きましたし。

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