DIR EN GREY 薫が語る創作の裏側「意味を求めるとどうしても時間がかかってしまう」

アルバムとは完全に異なるアプローチになった理由

―そんな前作のアルバムがあってこその今回のシングルだと思うんですけど、アルバムとは完全に違うアプローチですが、これは敢えてですか?

そうですね。俺は、次の新しいDIR EN GREYを作ろうとして、このシングルを書きました。具体的に言うと、アルバム『The Insulated World』ができて、さらに次の段階に行く時、バンドが深みを増したその状態にアグレッシブさとほんの少し構築感が上手く混ざれば面白いものになるんじゃないかなと思って作り始めたんです。





―その結果なのか、「The World of Mercy」は10分超えという長尺に。DIR EN GREY史上、シングルとしては最長ですよね?

そうですね。順番に話していくと、去年9月にアルバム『The Insulated World』が発売された時から次のシングルに向けて曲作りが始まっていたんです。その時はまだ漠然としていたんですが、とりあえずメンバーみんなで曲を選んで、全員でいじり始めた2曲があったんです。その時に、京君が「歌詞がある」と持ってきて、「この歌詞は俺の中では『The Insulated World』から繋がっていて、これが『The Insulated World』の最後なんだ」と。「だから、この歌詞を乗せられる曲を作ってほしい」「かつ長尺な曲がやりたいし、それをシングルで出したい」というリクエストがあったんですね。『The Insulated World』を制作していた時から京君は長尺の曲をやりたいと言っていたんです。それで「絶縁体」という7分超えの曲ができて、アルバムに収録しました。でも、まだ作りたかったんでしょうね。京君がそう言ってきた時に、その2曲のメロディとかのパーツを少しずつ集めて新たな曲にアレンジをして、長尺な曲を作ってみるっていうことを俺が京君に言ったんです。その時に、自分が作ろうとしたイメージに辿り着いた感じですね。

―かなりドラマチックな展開での楽曲ですよね。冒頭は静かに立ち上がりますが、中盤から激しくなっていく。『The Insulated World』がハードコアだとしたら、今作は構成的にはプログレに近い感じだと思いました。どんな2曲が合体したのかが気になります。

合体というよりも、それぞれの曲からパーツを持ってきて、新たに曲を作っていったような感じです。メロディは元の曲から結構持ってきましたが、アレンジは元の2曲とは全然違います。リフもほぼ新たに作ってますし、元の曲から持ってきたのは、メロディとほんの少しのギターのアルペジオの雰囲気くらいですかね。それから、元の2曲はテンポ感も違ったので、上手く合わせました。

―ストリーミング全盛の時代で、ヒットするには頭30秒ぐらいでサビが始まらないと受けないと言われています。そんな時代に……かなり挑発的にも言えるシングルです。

そうなんですよね。シングルって、その後にアルバムのリリースが控えていて、アルバムに繋げるための名刺代わりみたいなものなら難しく考える必要はないと思うんです。だから、単発でシングル出す時は、普通に出すのでは意味がないと思えてきてしまって。これから先、そういうシングルを出すこともあるかもしれないですけど、何か意味がないと、それこそ出す理由がないと思うんです。そういう点では、今回は意味のある一枚になったと思っています。

―それは間違いないです。

意味は何でもいいと思うんですよ。例えば「こういうジャケットに挑戦したかった」とか「こういうMVを作りたかった」とか、本当にやりたいことがあるなら、それでいい。ただ漠然と「シングルを出さないといけないので作りました」とか、そういう雰囲気だともう出せないなって。今回は京君の歌詞が、前回のアルバムから付随しているっていうこともあったし、最終的には10分という長い曲になったし、意味を作ることができた。そういう意味では、今回のシングルはDIR EN GREYを知らない人達に向けての一枚ではないんです。ただ逆に、尺が10分の曲だとか、そういう新たなフックはあるので、ひょっとしたら知らない人にも興味を持ってもらえるかもしれないですよね。

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