サミットにて国連が気候変動の現状を発表、事態は深刻

問題なのは、氷河と海面上昇だけではない。永久凍土、雪、氷が溶け出すことで、地すべりや雪崩、落石、洪水、山火事の頻度も増えるだろう。また氷河が後退することで水資源の利用性も不安定になり、農業に影響する可能性がある。

「世界の海洋と雪氷圏は、長年に渡り気候変動に伴い発生した“熱を吸収”してきた。自然と人類に与える影響は大きく、広範囲に渡る」とIPCCのコー・バレット副議長は言う。「地球上の海洋や凍結した地域における急激な変化は、沿岸部に住む人々を北極の人里離れた地域へと追いやり、彼らの生活を根本から変えてしまおうとしている。」

2019年8月にもIPCCは、気候危機が世界的な食糧供給に影響するという、今回と類似した悲観的な報告書を公開している。影響は、伝統的な農業の対応能力を遥かに上回る。9月25日の報告によると、海水の温度上昇に伴い海洋生物の住みやすさが低下し、“世界の見込み漁獲高”も減る可能性があるという。さらに、収入を海産物に依存する地域は苦境に陥るだろう。唯一の解決方法は、二酸化炭素の排出量を削減し、より持続可能な解決策に向かって努力することだ。「温室効果ガスの削減は、海洋の生態系に対する影響を限定するだろう。海の生態系は我々に食を供給し、健康を支援し、文化を形成してくれるものだ」とIPCCのハンス=オットー・ポートナー共同議長は述べている。「汚染などその他の悪影響を減らすことで、海洋生物が環境の変化により対応しやすくなり、さらに回復力の高い海洋を実現できるだろう。」

IPCCの報告で現実の状況が詳しく述べられているにもかかわらず、排出量を削減し持続可能な発展を続けるための“タイムリーで積極的かつ組織的なアクション”により影響の多くは軽減できるだろう、という考えの下に報告書は構成されている。人類にとって残念なことに、温室効果ガスの排出量が世界で最も多い中国と米国の2ヶ国は、気候危機問題についてほとんど無視を貫いてきた。両国は国連の気候サミットにおいても、実現可能な解決策に貢献しようともしなかった。

Translated by Smokva Tokyo

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