常田大希は今、なにを見て、なにを感じ、なにを創ろうとしているのか

常田大希(King Gnu / millennium parade)(Photo by Ray Otabe, Hair Styling by Kazuma Kimura)



ローンチパーティ開催前に行われた3D映像演出のリハーサル

5月16日、木曜日。深夜の恵比寿LIQUIDROOMへ呼んでもらった。そこでは、6日後に開催を控えている「millennium parade」の本格始動を告げるローンチパーティ『“millennium parade” Launch Party!!!』に向けたリハーサルが行われていた。このローンチパーティでは3D映像によるライブ演出を行うことが事前に発表されていたが、3Dライブを初めてやるLIQUIDROOMで、最新テクノロジーを使いながら、問題なく実施できるかどうかの現場テストを行う必要があったのだ。

本公演の映像をプロデュースしたのは、常田がスタートさせたクリエイティブブレーベル「PERIMETRON」。現在のメンバーは、映像プロデューサー/デザイナーの佐々木集、映像作家のOSRIN、3Dビジュアルエディターの神戸雄平、スタイリストの松田稜平、広告映像制作会社から独立したプロデューサー・西岡将太郎、アシスタントの井本翔、計7人。そして本公演のテクニカルサポートとして、比嘉了(Backspace Productions Inc.)とKezzardrix(INT)らが参加していた。そもそも、ライブ演出のなかで「音」「映像」「照明」を同期させるシステムを構築できる人が日本ではまだ少ないのだが、この日のためにそれを実現できる人員が集まり、さらには3D映像をリアルタイムで歌に合わせて動かすプログラムなども使われていた。常田は、こういった3Dライブの構想を約2年前から描いていたという。

「今カルチャーとして世界に出ていけている日本人って、あんまりいないと俺は思っていて。劇伴だと坂本龍一さんとかいますけど。アイドル文化とか、アニメタイアップを取ってアニメのヒットとともに海外でツアーをする、それが海外進出だ、って日本の音楽業界はやっているところがあって。でも自分はその姿勢とか、ルートには違和感がある。そういうものが、洋楽まがいのことをして海外に出ていくより圧倒的に面白がられるのもわかるんだけど。川久保玲さん(ファッションデザイナー。「コムデギャルソン」の創始者)が『パリコレ』で『黒の衝撃』と言われるような形で乗り込んだみたいに、俺らも『これだ!』というものをやるべきだと思っているんですよね。そのためには海外の人も体験としても楽しめて、惹きつけられるものが絶対に必要。そこの壁を破るにはどうしたらいいのかなって考えたときに、3Dだとか、演出面で個性を持って丸ごと飲み込めるようなことをしないとなって」

つまり、『“millennium parade” Launch Party!!!』が開催される5月22日は、常田が海外に向けて表現を発信するための、日本のカルチャーが新たな手法を持って世界で勝つための、始まりの一歩となる。

5月16日23時頃、現場リハーサルのために3DプロジェクターがLIQUIDROOMに搬入され、映像チームと音響チームによる機材セッティングが始まった。テクニカルな準備が通常のライブよりも数倍必要で、映像を映し出すまでにも手間がかかるし、映像と音を同期させるシステムを動かすためにも時間を要する。24時40分頃になってようやく、真っ暗いフロアのなか、3D映像が紗幕に映し出された。常田自身もここで初めて3Dメガネをかけ、3D映像がどんなものかをチェックする。「おお」と思わず声をこぼす常田らPERIMETRONメンバーたち。そこからさらに、各チームによる細かなチェックと調整が続いた。フロアのお客さんに映像がかぶらないようにするためにはどうすればいいか。「背が低い女の子とか、ちゃんと見えるかな?」という常田の配慮を解決するにはどうすればいいか。3D映像が一番迫力を持って目の前にまで出るためにはどうすればいいか。--新しい試みだからこそ、現場テストをやってみて初めてわかることだらけで、22日の公演を成立させるための微調整が粘り強く続けられた。しかも、本番6日前で、まだ映像の内容が完成していないものもあった。テクニカルチームがフロアでハードの調整を続けるなかで、常田たちがロビーでソフトの話し合いも行う。常田の瞼もだんだん重たくなるなか、現場リハーサルは朝の5時半まで続いた。


現場リハーサル中、常田とPERIMETRONメンバーは話し合いを重ねる。右にいるのは勢喜遊(King Gnu)(Photo by Ray Otabe)

常田の構想と才能を信頼して、各分野のプロフェッショナルたちが新しいことへの挑戦心と、それを実現できる創造力を持って集まっていたが、5月22日の本番に対する不安や緊張をあの場にいたすべての人が抱えていたと思う。

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