常田大希は今、なにを見て、なにを感じ、なにを創ろうとしているのか

最後に見せた、心の内。常田にとっての「孤独」と「幸せ」

チーム全体の務めによって『“millennium parade” Launch Party!!!』は、特に大きなトラブルもなく、オーディエンスから大拍手を浴びて終えることができた。情報量の多い映像、しかも3D、そして手練れのプレイヤーたちによる凄まじい爆発力の演奏によって、その場にいたオーディエンス全員が「圧倒されていた」という表現が適切かもしれない。すべてをやり遂げた瞬間、OSRINら映像チームはハイタッチをしていたし、常田いわくその後彼は涙も流していたらしい。本番を終えた常田は、安堵もあったとは思うが、それ以上に「ここからだ」という強い意志を持った表情と姿勢を示していた。


5月22日、恵比寿LIQUIDROOM『“millennium parade” Launch Party!!!』。ステージ前に紗幕を吊るして公演が行われた。センターにてコンダクターのように客席へ背を向けているのが常田。常田を囲むのは、(左から)石若駿、安藤康平、江﨑文武、ermhoi、Cota Mori、佐々木集、新井和輝、勢喜遊。(Photo by Ray Otabe)

「ここが本当にスタートですね。演出もまだ強度がなさすぎるから、これを持って海外とかの会場を押さえてドカンとやるにはまだ早い。30歳くらいを目安にはしています。3年かけて固めていきたいですね」

常田大希の一連の現場に密着していてわかったのは、まず、常田には鋭い眼差しの分析力と、天才的な創造力と頭脳、そして仲間を想って統率するリーダーシップがあるということ。ただ、その眼差し、頭、心には、ただただ強さが溢れているわけではないということもわかった。その奥を覗くと、孤独や寂しさ、やるせなさを抱えているように見えた。それがときに、皮肉や怒りとなって、楽曲や会話の言葉にこぼれ落ちる。常田大希は今、自分の作る楽曲を通して人と深く繋がることを求めてもがいている。

「まあ、日本の音楽業界がどうこうっていうより、単純に俺が素直に繋がれる仲間が欲しい、というか。友達が欲しい、みたいな話に近いかもしれないです。やっぱりいろんな人の目に触れるようになって、自分と違うな、わかり合えないな、って感じることが昔より増えたんですよ。そういうつらさは、昔より今のほうが増えてきた。それは、ほとんど音楽に絡んだことですけどね」

この言葉が出てきたときは、常田は自分の感覚を共有できる人やわかり合える人を探すために、millennium paradeを通じて世界を旅しようとしているのだということがわかった瞬間だった。最初に話してくれた、King Gnuのツアーで「Prayer X」の景色を見て初めて得た喜びが常田にとってどれほど大きかったのかも感じ直した。それに、常田が個人で上がっていこうとするのではなく、「millennium parade」「King Gnu」「PERIMETRON」といったチームを組んで、わかり合える仲間を大切にしている理由も見えてくる。あるところの会話で「すべては人なんだよね」とこぼしたことの意味の重たさも、改めて私の頭をよぎる。

「基本的に、音楽を伝えるということは、自分と似た人を探す、友達を作る、ということとすごく似てると思うんですよね。ちゃんと伝わってるなって思えて、俺と同じような感じ方をしてくれているなって思う人がひとりでも増えることが、自分にとっての幸せだと思うから」



常田大希
あらゆるカルチャーを呑み込む若き日本人アーティスト。東京芸術大学にて西洋音楽を学んだのちに、アメリカで行われている『SXSW2017』、『FUJI ROCK FESTIVAL』『GREENROOM FESTIVAL』『Mutek』など国内外多数のフェスに出演し頭角を現わす。2016年、DTMP名義でアルバム『http://』をリリース。2017年、King Gnu名義でアルバム『Tokyo Rendez-Vous』をリリース。2019年、King Gnu名義でアルバム『Sympa』をリリース。その他にも映画やドラマの音楽監督や、adidas、New Balance×Chari Co、Beams、Numero×Emporio Armaniなどファッションフィルムの楽曲提供、アメリカ版『Pokemon』『血界戦線』といったアニメーション作品への参加など、活動は多岐に渡る。そして2019年、新プロジェクト「millennium parade」始動。

<INFORMATION>



「Stay!!!」
millennium parade
配信中
https://millenniumparade.com/music

millennium parade Live 2019

2019年12月3日(火)会場:大阪 Namba Hatch
OPEN 19:00 / START 20:00

2019年12月5日(木)会場:東京 STUDIO COAST
OPEN 19:00 / START 20:00

プロデュース・企画:PERIMETRON
主催: Sony Music Labels Inc.
制作:Hot Stuff Promotion
チケット購入: https://l-tike.com/mp/

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