地球規模の「セックス不況」に直面か? 日本の次は米国で深刻化の恐れ

GSSのデータが性交回数の減少を表している点で、ミレニアル世代がセックス不況の真っ只中にいるという指摘は「ある意味で筋が通っている」と、ジャスティン・レーミラー博士が言う。同博士はキンゼイ・インスティチュートの主任研究員で、「セックス・アンド・サイコロジー」というブロクの著者でもある。2016年のデータ分析を例にとると、18歳から29歳までの年間セックス回数は1989年から1994年までは81.29回だったが、2010年から2014年は79.4回となっている。

しかし、レーミラー博士は「この結果の解釈には注意を要する」と指摘する。その理由は、この調査は自己申告に基づいている(データ収集法としては信頼性がないと言われている)上に、この調査では「セックス」の内容が定義されていない点だ。「人によってセックスの定義が異なること、さらに時代によっても異なることは周知の事実です」と、レーミラー博士がローリングストーン誌に語り、クリントンのスキャンダルで一躍ディベートのネタとなった「オーラルセックスは性交とカウントするのか否か」を例に挙げた。「アメリカ人のセックスライフがどのように変化しているのかを一般的に論じるには、これは理想的なやり方ではないのです」と。

日本の「セックス不況」の実情は、アメリカのそれとはまったく違う。年配の男性の童貞率はアメリカ人のそれとは比較にならないほど高く、日本の出生率の低下もアメリカより深刻だと、レーミラー博士が説明する。Y世代(訳註:1978年〜1990年生まれのベビーブーム世代の子供世代)よりもミレニアム世代のセックスの回数がわずかに少ないアメリカと違って、日本のセックス不況は格段に深刻で、長期的な影響を与える可能性をはらんでおり、このままの状態が続けば100年後には日本の人口が現在の半分になり得ると、人口動態の専門家たちが警鐘を鳴らすほどだ。「両国で何らかの現象が起きているは確かなので、我々はその理由を解明するためにちゃんとしたリサーチをする必要があります。ただ、最終的にまったく異なる原因を発見することになると、私は踏んでいます」と、レーミラー博士が言う。つまり、日本とアメリカの経済的、文化的状況がまったく異なるため、セックス頻度の低下の原因がまったく違う可能性があるということだ。

テクノロジーの進化によって親密な関係や密接なつながりへの興味が薄れるといった、「セックス不況」の基本的な原因と考えられていることは、べつに新しいことでも興味深いことでもない。太古の昔から、世間の不安を煽りたい人たちや、何に対しても大げさに反応する保守的な人たちが、何らかの技術が進歩を遂げるたびに言ってきた、使い古された手法だ(20世紀初めにテレグラムが登場したときに新聞のコラムニストが何を言ったか想像してみよう)。スマートフォンの浸透やモバイルのアダルトサイトPornhubの登場が、アメリカ人の性交回数を下げたとするのは「単純すぎます」とレーミラー博士が断言する。そして、「セックスや恋愛に対する社会的・文化的な態度の変化、仕事と生活のバランスの変化、ストレス、抗うつ剤のように性衝動や性的能力に直接影響する薬物使用など、広い範囲での変化を調査する必要があります。一言で説明できる簡単で単純な答えはないのですから」と説明してくれた。

Translated by Miki Nakayama

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