地球規模の「セックス不況」に直面か? 日本の次は米国で深刻化の恐れ

これとは別に、ミレニアル世代の性的パターンに大きな変化は見られないという調査結果もある。今年初めのコスモポリタン誌の調査で、アメリカ人が童貞・処女を喪失する平均年齢(ちなみに17歳だ)は過去20年間変わっていないと全米疾病管理予防センター(CDC)のデータが示していると報じた。アメリカ人のセックス回数が減っているのであれば、この平均年齢にも変化が生じるのが普通だろう。また、インターネットが性衝動を蝕んでいるというセオリーに風穴を空けたデータもある。2015年の医療専門誌セクシュアル・メディスンの調査によると、一人またはパートナーとの性的活動でポルノが使用される頻度は上昇しているのだ。

とは言え、数ヶ月おきに同じ話題のニュースが繰り返しヘッドラインを飾るうちに、アメリカのミレニアル世代はもっとセックスする必要があるという考えと、それに刺激された自分たちのセックス回数が十分でないというミレニアル世代の不安感は、人々の日常にすっかり溶け込んでしまった。今年初め、ワシントン・ポスト紙が、18歳から30歳までの男性の28%が過去1年間セックスをしていないと報じた。これは2008年から3倍になっている(しかし、これもGSSのデータに基づいている)。人々にこの数字の上昇の理由をたずねるのではなく、またミレニアム世代は最も不安を感じ易い世代という調査結果と関連するのかを論じることなく、ワシントン・ポスト紙のリポートはRedditなどの男性の権利運動家のフォーラムで引用され、女性が男性のセックスを「抑えている」として、女性に責任をなすりつける始末だ。

結局、こういうパニックが最終的に行き着くところは、セックスの回数増加でもセックスの質の向上でもなく、最初からセックスに対する不安感を煽るだけだと、医学博士デヴィッド・レイが言う。レイ博士はメキシコ州アルバカーキーを拠点にしている臨床心理学者で、セックスとセクシュアリティを専門としている。「このリポートや問題提起は、セックスに対する我々の考えが両極端を振り子のように行ったり来たりしていることを表しています。それこそ『あなたは性的欲求が強すぎる。セックスに依存している!』と言った翌日に、いきなり『あなたのセックス回数は少なすぎる!』と言っているようなものです。どちらにしろ、言われた方はびっくり仰天するわけで、テーマの微妙さを鑑みたアプローチをしていないわけです」と、レイ博士がローリングストーン誌に語った。

この記事では、ミレニアム世代が前世代よりもセックス回数が(若干)少ないのは嘘だとか、日本などの国で起きている出生率の低下は問題ではないと言っているわけではない。しかし、これらの記事やリポートは、セックス、若者、テクノロジーに対する我々の不安感と密接につながっていて、その狼狽した論調は、ミレニアム世代ではなく、その前の世代の本質を反映していると、一度考えてみてもいいのではないだろうか。

Translated by Miki Nakayama

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