白人至上主義者の新たなシンボルが誕生「マッシュルームカット」が暴力を呼ぶ

だが、そうした見方は加速主義の台頭によって変わった。「加速主義」とは、現在の社会を崩壊させて新たな社会を築く手段として暴力を擁護する白人至上主義者の一派のこと。2016年ごろにオルト・ライトが出現したことも、「男性ホルモンとアドレナリンが充満した男性が新たに過激化し、大挙して白人至上主義運動に加担するきっかけとなった」とピットキャヴェッジ氏は言う。その結果、暴力を社会変革の手段として容認する流れが生まれた。これに追従して、ルーフや、シナゴーグ「ツリー・オブ・ライフ」の犯人や、いわゆる“一匹狼”のニュージーランドのモスクの銃撃犯といった連中を、大義のために命をささげた殉教者として称える傾向が生まれた。ピットキャヴェッジ氏いわく、マッシュルームカットのシンボル化は「ディラン・ルーフを(一部の)白人至上主義者の崇拝と憧憬を集める象徴的存在に仕立てる」という、大規模な流れの一端をなしている。

もちろん言うまでもないことだが、害のないキャラクターが極右過激思想のシンボルとして祭り上げられた「カエルのペペ」の例と、今回のマッシュルームカットの例は比較にならない。大半のミーム同様、マッシュルームカットの画像は完全にテキストのオマケにすぎず、白人至上主義者は「今すぐマッシュルームカットにしてこい、と言っているわけではない」とピットキャヴェッジ氏も言っている。

だがこうした動きは、非常に恐ろしい風潮が広範囲に広がっていることを反映している。ルーフのような人物を擁護するだけでなく、積極的に神格化し、崇め奉るよう後押ししているのだ。実際にそれが効果を発揮している証拠もあり、事実それがきっかけでADLはマッシュルームカットに目を光らせるようになったのだ。数多くの白人至上主義者らが、模倣犯罪を引き起こそうとして逮捕されているし、地元のバーを放火する計画を企てたオハイオ州トレドの女性は、ルーフとメールでやり取りしていた。白人至上主義者がこれまで採用してきた他のシンボル同様、マッシュルームカットがしばしば冷笑的な、もしくはくだらない書き込みの中で使用されているとしても、暗示されている内容が身の毛もよだつものであることには変りない。

「マッシュルームカットが他の憎悪シンボルと違うのは、それ自体が明らかに殺人を黙認していることだ」とピットキャヴェッジ氏。「我々のデータベースにある憎悪シンボルの多くは、どれも攻撃的で、不快極まりないものだ。だが、今回のケースは、外でとことん暴力を振るってこい、というメッセージを暗に、時にあからさまに発信しているのだ」

Translated by Akiko Kato

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