白人の元警察官が黒人男性を誤って殺害、これまでの通例を覆した判決に

判決の理由と意味

しかし、私はそのとき、まだ陪審の構成を把握していなかった。12人の陪審員のうち白人はたったの2人で、それが評決の行方を左右した。評決後、陪審員制度の公平性を目指すThe Juror Projectの創始者ウィリアム・スノーデンがオンラインマガジンSlateのインタビューに対して語ったように、弁護側が展開した利己的なマリファナ作戦が「違う価値観を持った」陪審には逆効果となって「陪審の同情は別の方向に向けられたようだ」と語ったのだ。彼らの同情は9月のある夜、テレビを見てアイスクリームを食べていただけなのに、制服姿の警察官がドアから入ってきて、人生最悪の勘違いをされた男性へと向けられていた。

しかしながら、今回の悲劇の核心と、多様な陪審員候補団からめったにない確率で選ばれた陪審員こそが、ジーンさんの遺族らに正義を果たした。と同時に、果たせたのが珍しく多様性に富んだ陪審だったおかげであることからわかるように、まだまだ先は長いことも改めて知らしめた。遺族の弁護士ベンジャミン・クランプ氏は興奮気味に、加害者が無罪となった人種差別的暴力事件の黒人被害者たち全員の名前を列挙した。「今回の評決は、トレイボン・マーティンのためだ。マイケル・ブラウン、サンドラ・ブランド、タミール・ライス、エリック・ガーナー、アントワン・ローズ、ジェメル・ロバーソン、EJ・ブラッドフォード、ステフォン・クラーク、ジェフリー・デニス、ジェネヴィーヴ・ドーズ、パメラ・ターナー」――ここで彼の同僚の弁護士リー・メリットが割って入り、オシェイ・テリーの名前を付け加えた。「武器を持たないアメリカ中の黒人、褐色人種の人々にとっても」と言って、クランプ氏はこう続けた。「今日の評決は彼らのためだ」
。クランプ氏の喜びと、遺族の痛みに応えたいという願いはひしひしと伝わってきたが、同時に怒りも込み上げた。ガイガー裁判の評決は、過去にさかのぼって正義を果たすことにはならない。今回の評決は、ジーンさんの遺族のためでしかありえないし、遺族の喪失感は決して満たされることはないだろう。

Translated by Akiko Kato

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