ラスベガス銃乱射、遺族とホテル経営会社による訴訟合戦の果てに855億円で和解

ラスベガスで起きた銃乱射事件から2年、被害者を偲ぶ仮設記念碑の前で祈る人々(Photo by John Locher/AP/Shutterstock)

2017年におきたアメリカ史上最悪の銃乱射事件の犠牲者遺族と被害者は、米MGMリゾーツ・インターナショナルから多額の支払いを受け取ることになる。声明によると、その額は最大8億ドル(約855億円)にのぼる。

今回の和解は、犠牲者遺族と被害者がホテル側を過失致死で訴えた訴訟に対するもの。2017年10月、容疑者のステファン・パドックはMGMが経営するマンダレイベイ・ホテルの客室に身を潜め、階下で行われていたカントリーミュージック・フェスティバルの観客にむけて発砲。58人が死亡し、数百人が負傷した。

「あの日失われた命を取り戻すことや、大勢が味わった恐怖をなかったことにすることはできませんが、今回の和解により、何千人もの被害者や遺族に公正な補償が提供されることになるでしょう」と言うのは、銃撃事件で影響を受けた数千人の代理人を務める法律事務所のロバート・エグレット氏。「我々は、今回の和解条件が依頼人にとって最善の結果であること、そしてこのような事件の当事者にとっても大きな意味を持つと考えています」

ロサンゼルスタイムズ紙によると、銃乱射事件が起きた1カ月後、被害者らはMGMと事件現場となったルート91ハーベストフェスティバルを相手取って複数の訴訟を起こした。原告は、マンダレイベイはパドックが自室に大量の銃を保管していたことに気づかなかったとして、「適切な配慮の義務」に違反したとして訴えた。また、パドックが道向かいのコンサートの観客に向けて発砲し始める直前、警備員のジーザス・カンポ氏に発砲した際にすぐに警察に通報しなかったとして、ホテル側を非難した。

MGMリゾーツ・インターナショナルは声明を発表し、このように述べた。「10月1日に起きた事件は、1人の悪意ある男が引き起こした恐ろしい悲劇でした。こうした訴訟は想定の範囲内でしたし、我々も法廷で自らの立場を弁護する所存です。とはいえ、被害者の方々の気持ちを尊重し、適切な法的手段で誠意を示してまいります」

ニューヨーク・タイムズ紙によると、MGMは被害者への賠償金支払いを阻止するべく、効果的技術促進による反テロ支援法(Support Antiterrorism by Fostering Effective Technologies Act)、いわゆる安全法を発動した。この連邦法は911の余波で制定されたもので、この法律によると銃撃はテロ行為に分類される、とMGMは主張していた。その場合、MGMは責任を問われることはない。さらにMGMは訴訟を起こした被害者を逆に訴える手段に出始めた。

だが事態はクライマックスを迎えた。独立調停代行者が間に入り、被害者1人1人の訴えを個別に検証することになった。今後当事者は全員、いかなる訴訟も取り下げるよう要請される。手続きは2020年後半には終了する見込み。

Translated by Akiko Kato

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