香港の人権問題よりも中国マネーを優先するNBA

香港の湾仔地区で行われた民主主義を支持するデモが警官隊と衝突し、逮捕されるデモ参加者(香港/中国、2019年10月6日)(Photo by Anthony Kwan/Getty Images)

米プロバスケットボール(NBA)ヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー(GM)、ダリル・モリー(Daryl Morey)が香港の街で抗議の声を上げている多くの人々を支持するツイートを4日夜にTwitterに投稿したものの、後に削除した。

香港でのデモ活動は、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能とする条例改正案に反対の声が上がったことからはじまった。改正案に反対する人々は、中国政府に対する香港からの批判が封じ込められるだけでなく、限定的ながら半自治を保ってきた香港の独立性が侵害されると主張している。9月に改正案は撤回されたが、デモ隊はさらに、警察当局による暴力行為に対する独自の調査やキャリー・ラム香港行政長官の辞任を求めて抗議活動を続けている。

中国のような共産党政権に関わる際には、恐怖感が生じるのも納得できる。以前からNBAは、リーグに所属する選手たちの政治的立場について自由な発想で最も積極的に発言してきた団体として知られている。

しかしモリーGMにとって問題なのは、中国でもまたバスケットボール人気が高いということだ。最近の調査によると、中国でヒューストン・ロケッツは、ゴールデンステイト・ウォリアーズに次いで2番目に人気のチームとなっている。これは間違いなく、元ヒューストン・ロケッツのスター選手で現在は中国バスケットボール協会(CBA)の会長を務めるヤオ・ミンのおかげだろう。NBAにとって中国はあまりにも大きな上得意客であるが故に、中国の人権問題に対して意見するのは難しいのかもしれない。

ヤオ・ミン自身は、モリーGMのツイートに対して批判的な立場を取っている。彼は「香港に関する不適当なコメント」だと非難し、CBAはロケッツとの「交流と協力関係」を一時停止した。中国のスポーツウェアメーカー、リーニン(Li-Ning)も同様の対応を取り、チームとの提携を一時中断している。中国政府もまた領事館を通じ、GMのツイートに「大きな衝撃を受けた」とコメントした。ロケッツのオーナーであるティルマン・ファティータは即座に、モリーGMのツイートはチームを代表する意見ではないと否定している。

ティルマン・ファティータのツイート「皆さん、ダリル・モリーの発言はヒューストン・ロケッツとしての意見ではありません。私たちは政治団体ではありません。現在私たちが東京に滞在しているのは、NBAを国際的に広める活動の一貫です」

ロケッツもNBAも良識的に、モリーや香港のデモ隊や彼らの人権を擁護しようと思えばできたはずだ。中国政府が「暴動」と呼ぶ数カ月に及ぶデモで、2000人以上が負傷する中、彼らはスニーカーやウェアを売り、試合を続けている。彼らは、共産主義国家からかき集めるお金を手放したくないと思うあまりに、いとも簡単に謝罪した。

Translated by Smokva Tokyo

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