indigo la Endが見出した「良質なポップス」のヒントとは?

「やっぱり、人と一緒に何かをやるのは意味がある」

―川谷くんのワーカホリックっぷりは相変わらずだけど、アウトプットの形がこれまで以上に多岐にわたって、その分出会いも増えてるだろうから、それがバンドにもいい形で還元されるといいですよね。

川谷:この前蔦谷(好位置)さんと話をして、米津(玄師)はまだもっと若い時から蔦谷さんにプロデュースを頼んでて、その後「アイネクライネ」や「orion」なんかを蔦谷さんと一緒にやってるんですけど、蔦谷さんは最初「君は自分でできるんじゃない?」って、一回突っぱねたらしいんですよ。でも、米津はそのときの自分に足りないものをわかってて、蔦谷さんのエッセンスをしっかり奪って帰ったらしくて(笑)。やっぱり、人と一緒に何かをやるのは意味があって、海外もフィーチャリングめちゃめちゃ多いし、今回のうにさんも第5のメンバーみたいな感じでやってくれたから、こういうのも重要だなって。

―ちょうど今日蔦谷さんが「フランシス・アンド・ザ・ライツの新曲に関わってる人たちがすごい」ってツイートしてたのを見たけど、あんなに大勢じゃなくても(笑)、インディゴとプロデューサーの組み合わせも見てみたい気はする。

川谷:次のモードとして、客観的に何か言ってくれる人がいる状態で一曲作ってみても面白いかなって、今は思ってます。「5:5」じゃなくて、できれば「8:2」くらいの割合で、遠くから言ってくれる人がいたらいいんですけど(笑)。

―今回のアルバムの楽曲って、美濃さんがミックスした楽曲も含め、プロダクションはかなり面白いですよね。ここ数年「バンドは過去のものになってきた」とも言われる中にあって、打ち込みのトラックと並列に聴くことのできるプロダクションがバンドに求められるという流れもあるように思いますが、そういった視点はありましたか?

佐藤:打ち込みとか、音楽を作る形態はいろいろあって、やろうと思ったらできるわけじゃないですか? でも、今「新しい手法を取り入れました」とか、「シンセをふんだんに」「ダンス・ミュージックのエッセンスを」みたいに言ってるのは、逆にダサいっていうか。

川谷:栄太郎は、俺が「こういう感じにしたい」って言ったのを、自分の中のライブラリにトレースして、「このドラムの音にしよう」みたいなことを一曲ごとにやったらしくて。


佐藤栄太郎(Photo by Masato Moriyama)

佐藤:「あのドラマーを憑依させよう」みたいな感じですね。各々の担当してる楽器を使うことに無限の可能性があると思うし、録音にしても、マイキングしてる以上関わってくれる人によってもまったく違ってくるわけで、バンドマンはそこに行くべきだと思うんですよ。そういう行為って、「いろんな手法を取り入れました」とかよりも、もっと難しくて、尊い行為だと思うので、今回もそこに挑戦したし、みんなもっとやるべきだと思います。

川谷:具体的に言うと、「花傘」の仮タイトルは「ユーミン(仮)」で、ユーミンさんっぽい音にしようと思って、ギターは俺も長田くんも結構ラインで録ってて、アンプと混ぜたりして。「心の実」は仮タイトル「ヤマタツ(仮)」で、達郎さんみたいなカッティングを意識したり。もともと好きでしたけど、今回はもう一歩踏み込んだというか、サカナクションの(山口)一郎さんも「忘れられないの」を作る前に一回達郎さんをまんまコピーしたって言ってて、僕らコピーはしてないけど、ベースやギターの音も意識的に近づけて。とはいえ人間なんで、手癖とかも入ってきて、ちょっとずれる。それを楽しんだ感じですね。







佐藤:川谷さんがリファレンスの曲を送ってくれても、メンバーそれぞれのイメージするユーミンさんとか達郎さんってちょっとずつ違って、でもそれがギュッとなったときが面白いんですよね。

川谷:あと今回歌メロをほぼ弾き語りで作ったんですよ。自然発生的なものを待つんじゃなくて、納得いくまで考えて作って。

―あ、それはすごくでかいですね。アレンジの面白さ、プロダクションの面白さも十分あった上で、今回歌メロ自体もすごく立ってると思ったので。

川谷:それこそ、ユーミンさんや達郎さんの声を頭の中で再生しながら歌メロを作ったりして、でもやっぱりそのままにはならないんですよ。達郎さんのレコードを集めて、部屋で流して、でも曲は作らずに一回寝る、みたいな(笑)。そうすると、結局全然違うものになって、でもそれが面白かったですね。

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